「動物と話せる少女リリアーネ1 動物園は大さわぎ!」タニヤ・シュテーブナー、2003(ドイツ)。中村智子翻訳、学研プラス。
小学生の子供が読んでいたのでドラドラと読んでみました。動物と話せる少女リリアーネがいて、さらにはリリアーネが笑うと周りの植物に花が咲く。すごいですね。ただ、毎度その能力で周りから不審がられて排斥されるので、今回の転校先ではその能力をまずは隠そうとします。
そこに絡んでくるのは、もの凄く文学が好きで教養が深い男子生徒です。ただ、この男子は男子でそれが露見すると、今手に入れている「イケメンでみんなが憧れる勝ち組男子」の王座から滑り落ちるんじゃ無いかと胃を痛めていて、必死に隠しています。
いろいろあって万事めでたく収まるのですが、この初期設定がすごいですね。
自分が子供の頃というのをきれいさっぱり忘れているわけですが、ドイツでも日本でも、小学校という場は労働の場なんかよりもよっぽど「イケてるイメージ」というふわふわしたものを巡ってどろどろしている。当然ながらそれはそこで劣勢になると不愉快な人間的事象に見舞われるから、どろどろしている。子供は大人の縮図だけど、大人よりも弱い。孤立する強さや開き直りがむつかしい。だからいじめも行ってしまう。
これは労働の場に出た方がよっぽど楽かも知れませんね。格差も理不尽もあるけれど、少なくともほとんどの場合は労働をするために集っているのであって、終われば別れられるから。
そんなこんなを改めて認識した読書。それはぢゃあ、30年前の子供は牧歌的で幸せで、2020年代の子供が病的で不幸かというと、個人的にはそうは思いません。子供は常に大変です。さて大人になっていく中で。社会や環境が移り変わっていく中で。子供のうちに、「孤立しない能力」を身につけることが大事か、「孤立しても恐れない勇気」を身につけることが大事か。なんも考えずに反射的に生きているとついつい前者になるけれど、立ち止まって考えると後者ですよねえ…。
- 感想投稿日 : 2023年2月13日
- 読了日 : 2023年1月24日
- 本棚登録日 : 2023年1月24日
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