少将滋幹の母 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1953年10月9日発売)
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本棚登録 : 668
感想 : 58
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▼かなり以前に読んだんですがその時に感想を書き忘れたもの。だいぶ忘れていますが。

▼平安時代、初老の中級貴族?が、歳の差婚の若妻を、権力者の藤原ナントカさんに、奪われるんです。でこの若妻は当然評判の美人である。初老貴族は屈辱に震えます。悔しい。惨め。この若妻との間に子供がいて、これがのちの少将滋幹なんです。つまり少将滋幹にとって、幼年期にそんな形で生き別れになっちゃった、お母さん。少将滋幹の母。

▼この顛末と、母恋の思い。これが実に心理劇で映画「羅生門」の如きサスペンスフル。な、だけではなくて。それに加えてなんだか禁断な恥ずかしさ。身悶えするほどの気はづかしさ。そしてなんだかエグくて儚くて人肌で美しい。つまりは谷崎なんです。

▼どうやら本作は翻訳などされているという意では谷崎の代表作だそうです。まあ、海外受けしやすそうですが(短いし)。圧倒的におもしろいのだけど、個人的谷崎ベスト3には入らないかなあ・・・。って何がベスト3なんだろう。「細雪」「猫と庄造」「台所太平記」な気もするが・・・いや「春琴抄」・・・「痴人の愛」・・・「卍」・・・そもそも未読の作品も(谷崎前期中心に)まだまだあるし・・・うーん。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本:お楽しみ
感想投稿日 : 2024年1月5日
読了日 : 2023年5月3日
本棚登録日 : 2023年5月3日

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