「物語スペインの歴史」岩根圀和。中公新書2002。
大学の先生(外国語学部だそうですが)が書いたものです。
「キャパの十字架」を楽しむための準備運動の一環です。
・北アフリカのイスラム圏と、ローマからのキリスト教文化とのせめぎ合いの地であり、完全にイスラム圏だった時代も長くあったこと、そして決して悪政でもなかったことが良く分かった。
・レコンキスタ(キリスト教側の国土回復)に1400年代までかかった。800年くらいからずっとせめぎあいで、その間は普通に国王制の国家を中心とした群雄割拠。
・レコンキスタ終盤くらいからは欧州各地と同じ、各地血縁の王政。スペインのステイタス向上にはコロンブス含めて「アメリカ大陸の発見とそこでの言葉も失うほどの非人間的な虐殺と搾取」があった。
・でも結局欧州中心で言えば「田舎風」だったんだなと思うのは、無敵艦隊の儚い栄光があったとしても、中心の動きからは「辺境」だった。たとえばプロテスタント、宗教改革というのは入ってこなかった。
・多分それはそれ以前に「イスラム」を異端とする残酷非道な異端審問が行われていて、その流れの中でいわば新教の侵略を早めに阻止したと言えるか。それとも辺境で新大陸からの搾取に依存しすぎて産業革命への転換が遅れたからか。
・だから同じく辺境だったイギリスの台頭とともに衰えた感。オランダ植民地も失う。これが無敵艦隊の敗退とセット。エリザベス1世の時代。1558-1603。この時代がセルバンテス。
・王政が続くが国外の植民地と影響力を立て続けに失ってフランスに追随する時代。そしてナポレオンの征服で「革命の輸出」に洗われて、ナポレオン後は王政復古するも共和制とのせめぎあい。
・20世紀に入ると悲惨が続く。第1次世界大戦~ロシア革命を経て、軍人のクーデターで混乱時代に突入。1930年くらいに無血革命で第二次共和制となるが、軍部右翼(というか反共資本主義勢力)と共産主義勢力の狭間で混乱、世界恐慌の中、軍人フランコが反共勢力を結集して挙兵、ナチスの支持も受けて「スペイン内戦」の結果、1970年代まで続く独裁政治。
・フランコの死後一瞬王政復古するも、王家が分かっていて民主制にようやく移行して今にいたる。
というような流れがまさに物語として大筋頭に入った感じです。自分にとっては良書でした。
- 感想投稿日 : 2023年1月15日
- 読了日 : 2023年1月7日
- 本棚登録日 : 2023年1月7日
みんなの感想をみる