今からさかのぼること6000年前の、北ヨーロッパの針葉樹の森が舞台の壮大な古代ファンタジー。
解りやすい魔法などは存在せず、時に残酷な牙を奮う大自然を相手に生きてゆく力強い人たち。
そこに根ざすものは、大自然への畏敬の念。
自然を敬い、その恵みを享受し、感謝を怠らず、共存する人間の強さ。
このシリーズも4作目に突入し、表紙はとうとう、レンが登場!
可愛らしさと美しさの合間にいる、少女時代特有の表情がとても素敵。
前巻で意志に反して刻まれてしまった<魂食らい>のしるしを、レンやフィン=ケディンにすら打ち明けることもできないうちに、トラクを快く思わないイノシシ族のアキに暴かれ、彼は<ハズシ>となった。
ハズシは死者とみなされ、どの氏族から受け入れられることはなく、生存のための道具も食料も水すらも与えられず、その姿を森で見かけたら殺してもいいという厳しい掟。
そしてハズシをかくまおうとする者もハズシと同じ扱いを受けるため、レンも表だってトラクを助けることができないでいる。
森の奥深くへと追放されたトラクが<魂の病>に罹り、徐々に人間性を失っていく様子は読んでいて辛い。
あのウルフのことでさえ、認識できなくなってしまうのだから。
しかし、トラクは強かった。
ウルフやレンとの絆、親族であるベイルはトラクの希望の光。
古いものを壊していくのは、いつだって若い力。
トラクの胸に忌むべきしるしを刻んだ<魂食らい>に心を支配されかけるたびに、彼らに助けられ闇の支配に抗いつづけたトラク。
諦めなければ、いつか道は拓けるものだとその姿を見て思う。
レンの秘密も明らかになり、物語はますます盛り上がりを見せる。
あと残り2冊だけれど、この凍てつく森の世界から、まだ出ていきたくはないなぁ。
- 感想投稿日 : 2012年11月12日
- 読了日 : 2012年11月12日
- 本棚登録日 : 2012年11月10日
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