倫敦から来た男--【シムノン本格小説選】

  • 河出書房新社 (2009年10月30日発売)
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感想 : 12

主人公がだいたい陰鬱で、社交性が無くって、
何かを背負っていて、あるいは背負うことになる、
シムノン先生の所謂本格小説。

暗くて落ち込むんだけれど、
それでもなんだかたまにとっても読みたくなって手に取ってしまう。

今回読んだ「倫敦から来た男」の主人公は
港で転轍手として働く、中年(50歳くらい?)の男、マロワン。

まずこの転轍手と言うお仕事が
インターネットでも検索したりもしたけれど
よくわからなかった。

どうやら、港の小ぶりの灯台(?)みたいな
「転轍操作室」と言うところで
夜になにかを開けたり閉めたりしている様子。

マロワンの懐具合は寂しい様だ。
家族もみんな苦労をしているみたい。
それがまた逆にマロワンを意固地にさせている雰囲気。

ある夜、マロワンは転轍操作室から二人の男が喧嘩をし、
殴られた男が海に落ちるのをみる。
落ちていく男は小型のスーツケースをもって落ちた。
人がいなくなってからこっそりスーツケースを海から
拾い上げたマロワンは…

大変なことが起こって、
それも自分がどんどんそれをわざわざ起こしたような時、

「あぁ、あの時こうしていれば…」と思い返す、

また、それをしている、今そのときにも
「いまやめれば、まだ間に合う!」と思いながら、

その事の重大さも大小あるとしても、

なぜか悪い方、駄目な方を
波に乗るように、引きずり込まれるように
してしまうこと、ある気がするなあ。

男を海に突き落としたイギリス人の男、不運な軽業師。
その男を追って、イギリスから来た
話の分かる、情感のある刑事が、とっても格好良い。

お金を盗まれた男の娘、
被害者として、犯罪者の身内にはどんなに冷たくしても
許されると思っているところが、
なんだか色々考えて、逆の面で身につまされて、
私も今までいけないところがあったかもしれない、
と考え、少々、傷心。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: シムノン
感想投稿日 : 2016年8月2日
読了日 : 2016年8月2日
本棚登録日 : 2016年8月2日

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