トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)

  • 山と渓谷社 (2012年7月23日発売)
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感想 : 43

毎日、遭難に関する本を読み、
ネットでも情報を収集し、

「とにかく、絶対、いたずらに、山には行かない」の気持ちは
さらに固くなり、例えるならば、

『12本爪のアイゼンでも歯が立たぬアイスバーン状態』
(↑なんか、こんなことも覚えたみたい!)

この本は、2009年に起きた北海道のトムラウシ山での
大量遭難事故の真実にせまったルポルタージュ。

ガイド3人、ツアー客15人のうち、
ガイドを含む9人が死亡すると言う
大事故だった為、記憶に残っている人も多いと思う。

私も当時、新聞などのニュースをみて、
ガイドの一人が遅れた人も構わず、
自分だけどんどん先に降りて行ってしまい、
被害が大きくなった、と言う印象を抱いていたから、
こちらを読んで、それが誤解だった事を知った。
(実はこのガイドも低体温症になり前後不覚に陥っていた)

9人の死因は低体温症、
でもこれは7月の出来事なのですね。
(わたしも途中であれ?っと思って日付を確認してしまった)

トムラウシ山の気象はとても変わりやすく、
場合によっては
夏でも3,000メートル級の冬山より厳しい時がある、とのこと。

また、進んでいくと避難小屋もエスケープルートも無い道が続き、
荒れている天気の時は非常に危険な場所であるとのこと。

しかし、ツアー客の中にはその知識もなく、
ルートも知らず、地図も持たず、
と言う人も少なからずいたということ。

私も2泊3日の山小屋を泊まっていくツアー登山だったら、
ただガイドさんについていけばいいのかな?と思う気持ちが
わかる気がしてしまうが、

この本によるとそんなことはもっての外、とのこと!

もう過ぎてしまったことだけれど、
危険なルートで、荒天で、メンバーのほとんどが60代以上の女性ばかり、
と聞くと、もう、嫌な予感しかしません!

今回の事故の原因は

登山者それぞれの力量がわからないままの大所帯であったということ
(一番遅い人にペースを合わせる為体力が消耗される)

事故のあった日、荒天であったにもかかわらず、
ラジオや天気図などを確認せず、リーダーが出発を決めたこと

吹き飛ばされそうな風雨、道が川の様になっていて
体を濡らさないと渡れない箇所があったのに、
引き返すことをしなかったこと

体調不良者が続出したのにも関わらず、
安全な場所にとどまらなかったこと(またその装備もなかった)

登山者の装備が不備で体を濡らしてしまったこと

ガイド同士面識がなくコミュニケーションがとれていなかったこと

ガイド自体がトムラウシ山に詳しくなかったこと

低体温症の知識がガイド、ツアー客ともほとんどなかったこと

などがあげられる。

ツアー会社も時間通りに帰れないと
飛行機などを取り直さなくてはならない為、
ガイドに遅れないようプレッシャーをかけていたこともあり、
荒天の中での出発となったようである。

ガイドもツアー客も
「なんとかなるだろう(大変なことにはならないだろう)」
と言う意識があったことも確かだそう。
また、「こんな天気の中出掛けるのか」と思っても
場の空気を乱すと思い言えなかった人もチラホラおられた様。

夏でも体が濡れて冷え切ると低体温症になり
あっという間に死に至る、
回復する方法としては体を温める以外に無いそうで、

例えツアー登山でも、自分の身を守れる(ビバークできる)
最低限の装備は持っていなければならない、とのこと。

ポイントとしては
まず体を濡らさないよう、特に雨具と靴に気を遣うこと。

すぐに取り出せるよう、食料をポケットなどに入れておくこと。
(お腹が減っていると体力が落ち、体が動かなくなる)

一人になっても遭難しないように
ちゃんとした地図、方位磁石、ヘッドランプは必須、
またビバークできるよう為、シート、ツェルト(布だけのテントのようなもの)
を持参。
(他の本に載っていましたがツェルトを広げ、
その中で折りたたみ傘を広げるだけでも
快適になると言う事です)

本の中に
信頼できるリーダーの元、自分自身でも責任をもって
山歩きするのが一番望ましいとあった。
確かにそういうリーダーならそれぞれの力量もわかっているだろうしね。

また、自分が極限時にどうなるか?と言うのが
常々気になるんだけれど、
この時も自分の命を顧みず、歩けない人に寄り添う人、
「こんなことしていても無駄だ!」と
倒れている人を置いて先へ行ってしまう人、

でも先へ行った人も責められないと思う、
私も知らない人が倒れてて、
そこにいたら自分も死にそうだったら?
どうだろう?
優しくできる自信はまったくありません…。

そんなこんなで、とても為になる有益な本、
でございました。

とにかく、自分の事は自分で責任をもって、
感覚を研ぎ澄ませて、
嫌だなあと思ったら、好感度などは気にせず、
やめる勇気をもとう!

また、山登りを趣味としたいのなら、
登山教室とかで雪洞を掘る練習や
ビバーク山行など、体験した方が良さそうだねー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年9月8日
読了日 : 2016年11月23日
本棚登録日 : 2016年9月8日

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