もともと文章を書ける人がより良い文章を目指すための作文術・執筆術ではない。
書きあぐねて手が止まってしまう苦しみとどう向き合うかを中心に、4人の著者がそれぞれの悩みやその対処に関する経験を語る。
その苦しみの中での試行錯誤のプロセスやその帰結はとても共感できるし、参考にすべきところが多い。
ただし、4人の筆者がいずれもいわゆる人文系の文章を書く人であることは相応に割引く必要がある。おそらく彼らが求める文章というのは、呼吸をするように文を書いたり、思考と執筆とが不可分に結びついたり、執筆が思考を駆動したりといった、ある特定の文化に基づいている。
しかし、大半の人、とくにホワイトカラーがその実務において書くことを求められる文とは、もっと事務的でもっとそっけない文の羅列のはず。人文系が求める文章とホワイトカラーに求められる文とは、書くべき内容もその姿勢も大きく異なっていて、そこは埋められない溝がある。
ホワイトカラーための事務的でそっけない執筆術、というものがあっても良いと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年1月5日
- 読了日 : 2022年12月31日
- 本棚登録日 : 2023年1月5日
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