オンブレ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2018年1月27日発売)
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本棚登録 : 268
感想 : 38
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 帯に「痛快無比、ワイルド&クール」と書かれているだけのことはあり、ハードボイルドな主人公がただただカッコイイ小説。冷徹に合理的に振る舞いつつも熱いハートを持っている主人公、その秘めたるハートに火をつけるヒロインという二大キャラが分かりやすくて良かった。1961年と、かなり古い作品のためかやや前半が長く感じてしまったけど。
 西部劇と呼ばれるものを読んだり観たりした経験は恐らくないのだが、Prime video等でも見られる(オンブレはないけど)ので一度は観てみようと思う。

 寡黙な男というのは価値観としてはやや古く、昔はカッコいいとされていた男性像という印象だけど、だからこそ現代から見れば痛快に映る。中学時代に読んだら主人公の真似をして黒歴史になっていたかも。
 訳者は村上春樹。この作品がリアルを描きつつもファンタジー色が強いことを、訳者は「神話的世界」と表現し、「神話は理解するものではない。ただ受け入れるものなのだ。」という。訳者の小説も多分にファンタジー要素はあり様々な寓意が様々な評論家・読者により想定されている。
 私も、訳者の小説を読む際に、物語をただ楽しもうとは思いつつ、寓意を読み解こうと身構えてしまっていた。「意味や寓意に振り回されなくてもよい。楽しいと思えればそれでいいんだ。それで、ついでに得るものがあったらラッキーくらいでいいじゃないか」と素敵な知人が言っていたのを思い出した。本小説は、そんな気持ちで読めたと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家 ら・わ行・その他
感想投稿日 : 2018年5月28日
読了日 : 2018年5月16日
本棚登録日 : 2018年5月28日

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