まりえが主人公に語りかける「私の絵を描いている先生の中に入ってそこから自分を見てみたい。それで自分自身の理解が深まる。先生も私のことをもっと深く理解できる」とは深い言葉。また主人公が自分自身の手を眺めながら「私自身にとって私という人間が意味を持たない存在であるように思えてきた。私の手に見えず、見覚えのないよその人間のもののように見えた」との言葉も、人間とは何かを問いかけている。井戸のような「穴」に異次元世界との接点を感じさせ、また意味深な象徴的、含みがあることが実に興味深いところである。第2部では主人公の実に不思議な世界の体験が、これぞ正に村上ワールドという感じで、私が魅きつけられる点でもあり、ついていけない人もいるところだと思う。
終結部の平和さが、それまでの不思議な物語とどのように繋がるのかなど、これからも解説書などで研究してみたいテーマが多い。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年12月16日
- 読了日 : 2017年6月20日
- 本棚登録日 : 2017年3月8日
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