昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2010年6月25日発売)
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 太平洋戦争開戦の直前に「総力戦研究所」の名前で36名の30歳代の優秀な各方面のエリート官僚たちが集められて、模擬内閣を開催した。彼らが出した結論は日米開戦すると日本は必敗とのこと。石油、造船などの消費と生産のシミュレーションはいずれも日本がじり貧になることを示していたようだ。当時の東條陸相への報告は、東條を動揺させたが、恐らく正規の内閣でも同じ結論だったのではないかとの推測。だからこそ、東條に口止めされたと考えられる。日米開戦を避けるため、昭和天皇が木戸幸一内大臣と図り「虎穴に入らずんば…」の心境で東條に大命降下。東條は開戦を避けるべく天皇の意図を感じていたようだが。展望がないまま、戦争へと突き進むことになる日本の無責任体制を鋭く分析している。初めて気が付いたが、空襲米機を撃墜した場合の捕虜をどうするかという議論の結論が出ていなかった!驚きである。やるという結論が先行し、見通しがあったわけではなく、つじつま合わせの数字で都合よく解釈して結論づける。日本的決定システムの典型的な失敗例だと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史
感想投稿日 : 2020年7月13日
読了日 : 2020年7月13日
本棚登録日 : 2020年7月6日

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