【要約】
日本では権力の不作為、一部の利益の為に多くの人命・財産・社会的影響に損失が生まれている。だが大手メディアはそれを報じず政府の広告塔となり、国民は何が正か知らない状況だ。アメリカは現在民主主義の危機だ。日本も同様にそうなる可能性を意識する必要がある。

【感想】
日本を第2の故郷として愛してくれている著者が、日本の良くないところを外国人の視点で厳しく批判している一冊です。

きちんとアメリカの現状と過去の歴史に対する痛烈な批判(日本への批判より厳しい)を加えながら書いている為、自国自慢をしながら他を貶めるような嫌味なところはありません。

むしろ地球学者(地震学者)でありながら、幅広い目線で日本の多くの問題点を厳しく指摘するその文章は読んでて心地よく感じるくらいです。


おそらく、大昔から日本にはびこる「不作為」。それはつまり、物事に対して消極的であること。事なかれ主義、責任の曖昧化、なんとなくぼやっとさせてやり過ごす姿勢。
国のトップから末端の我々に至るまで、心と体に染み付いた性根根性でもあることでしょう。
いわゆる曖昧な文化、ニッポンです。
ただ、それが我々にとって大きな損失であることをきちんと説明し、声をあげるよう励ましてくれています。

日本が世界から見られた時に、非常に生産性の低い国としてバカにされているという事実。それも根本的に改善できるはずが、これまでの風習や、「昔からそういうものだから」という考えでなんの変化もなく数十年も同じことを繰り返しているのです。

そういう意味でいうと、英語教育に対する著者の考えは目を見開かれました。
日本人は、高校まで就学する人であれば6年間、大学で2年学ぶとすれば8年間も英語を学びながら、英語を日常的に使いこなしている人は何割いるんでしょう。
それはもう、改善が重ねられながらも英語教育の方法自体が失敗であることは明らかです。
だが、失敗を認めようとしない人達がいる。
また、失敗か成功かを考えもしない私達がいる。

そうする中で日本は海外から取り残され、国際情勢や経済活動においても不利な立場に追い込まれるのです。


不作為はそれをなす人たちの非常に大きな問題点ですが、何よりも私達自身が政治や経済、社会に対して不作為であることが一番の問題であることを気付かせてくれる一冊でした。

一点、不満を言うのであれば、日本の問題点については耳が痛くなるほど教えてくれますが、その1つ1つに対して、他国との比較がより具体的に欲しいところでした。

2019年4月21日

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読書状況 読み終わった [2019年4月21日]
カテゴリ 社会

【感想】
多くのエッセイがまとめられたエッセイ集であるため、要約は割愛します。

400ページ以上ありますが、内容はユーモアに富み、スイスイと読み進められる。

著者のヤン・デンマンは実在するのか、しないのか。
著述内容から推測すると70代〜90代??のオランダ人特派員記者だと思われますが、その行動力や、物事に対する思考、時事への捉え方を考えると、おそらく実在はせず、ヤン・デンマンを演出する集団がヤン・デンマンを演じつつ、様々な意見を著述しているのではないか、と推察します。

書かれている内容は日本の経済、政治、文化(アングラも含め)、国際関係、教育などなど多岐にわたり、一概にこういう本、と書くのは困難。
ただ1つ1つのことに気付きが多く、外国記者や関係者との軽妙なやりとりに、今の日本のイメージ像がぼんやりと捉えられます。

この本を読んで、外国人から見た日本像と捉えるのは危険です。
なぜなら本当に著者が外国人なのかが分からないため。
ただ、著者含めて登場する記者たちや部下など(本当にいるのならば)の発言から得られる圧倒的な情報量とそれへの解釈は、今まで考えたことのない視点を与えてくれ、大きな刺激となります。

皮肉とユーモアに満ちた知識本(ただし全てが正しいものとは限りません)として、一読をお勧めします。

難点としては、あまりにも情報量が多いため、他の本と読み比べして検証し、自分の考えの糧とするには時間と体力を大きく割く必要があること。エッセイだから仕方ありませんが、1つ1つの事柄について出典元などを細かく記載してもらえると嬉しかった。ただし、出典の記載も膨大になるでしょうし、出典ではない個人の考えがほとんどであるため、出典元の記載があったとしても役立つかどうかは不明ですが。

物の見方が一辺倒になっているな、と感じたら読み返したい一冊です。

2019年5月4日

〈要約読み〉
グローバル化する世界状況を無視して生きることはできない。マスメディアによる海外へに向けたイメージ形成戦略は重要であり日本も戦略的に情報発信する必要がある。国際経済活動、安全保障の観点から優位に立つためにもまずは世界の鏡に映った海外からの日本のイメージを正確に認識するべきだ。


〈感想〉
海外の人たちが日本をどのように見ているか。
それをテーマに読書を進める中で、世界各国の日本の報じられ方がまとめられた本書はとても良書だと思います。

寄稿集のため、感想は散漫としてます。。

日本が経済的にも安全保障の面でも世界の中で優位に立つため(もしくはいつのまにか悪者にされないため)の戦略としてマスメディアによるイメージ形成、情報発信が必要。そのために現状把握のためのレポートを各章の著者が独自の分析、見解を踏まえて著述されています。

この当時の日本は日本脅威論、日本異質論の高まりがバブル崩壊において収束し、日本は斜陽の時代の真っ只中。その日本が海外からどのような評価を受けているのかが、政治面、経済面、文化面から見えてきます。

読んでいて思ったことは、
アメリカは割とステレオタイプなアメリカ像。その立ち位置で日本のことを見ている。アメリカはやはりアメリカ。アメリカ as No. 1 ですね。
意外に思ったのはヨーロッパ各国。どの国も日本に対しての批判的な記事が多い。
イギリスでは第二次世界対戦の頃の日本がイギリスに対して行ったことが今でも取り上げられる。
これについては大英帝国としてあなた達は世界に対してこれまでどれだけのことをしてきたと思っているのか、反論もしたくなります。
ドイツについては日本のことを悪し様に書くことが、日本のニの轍を踏みつつある自国に対する反面教師として扱われている。私のイメージでは、ドイツと日本人は勤勉、実直という面で親近感に近いものがあると思っていましたが、メディアの扱われ方が意外すぎて驚き。

アラブ世界については、日本に対しての興味はほぼなし。よく考えると当然ですが、原爆を落とされた広島の捉え方が、日本の意図とは真逆であり、かつ事実と異なることを事実として発信してしまうということに対して、かなりの疑問に感じられました。

欧米各国、アラブについて共通することは、やはりバブル時と比べて日本に関する報道が目に見えて減っており、代わりに中国に関する報道が増えていること。つまり、経済の失墜とともに他国から興味が薄れており、日本から適切な情報発信ができていないがために、異質論の残滓がネタとして顔を出すような状況です。

東アジアの中国、韓国については、もともと抱いていたイメージ通りでしょうか。
特に韓国については、この当時の状況ですら両国の根本的な関係改善には絶望します。今現在の状況を考えると、悪化の一途ですね。

この当時の状況から、日本は戦略的にどのような発信をしてきて今に至るのでしょうか。
日本の観光客は飛躍的に伸びています。ということは当然プラスに働くことを発信し、奏功しているということでしょう。
それが国際経済、安全保障の面でどのように影響しているのか。改めていろいろ調べたくなりました。

★5としたいところですが、日本とも関係の深い国々が並ぶ東南アジアについてのレポートがなかった。その点において★を1つ減らしました。
東南アジア、アフリカの報道状況もレポートされていたら★5でした。

この本が刊行されたのは、このレビューを書いている現在から15年前。他の方も書かれていますが、こういった本は一定の期間ごとに発刊されてほしい。せめて10年ごとに世界各国の日本に対する報道内容を知りたいと思います。

2019年2月16日

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読書状況 読み終わった [2019年2月16日]
カテゴリ 国際関係

〈要約〉
訪日外国人数は近年急激に増加しており、政府は高い目標を設定してるが外部要因による影響を大きく受けやすい。リスクヘッジの為にも、外国人が体験したいと考えていることと日本人が体験して欲しいことのギャップを念頭に歴史を学び分析し、きめ細やかなマーケティングを行うことが欠かせない。


〈感想〉
「観光」という観点から日本の近現代史を俯瞰した「歴史の教科書」です。

幕末から現代に至るまでの外国人から見た日本、興味がある日本と、それを受けて日本の観光に対しての意識がどのように変遷してきたのかが分かりやすく書かれています。

最終章では、更なる外国人観光客の増加を見込む日本に対しての、著者からの課題提案で締めくくられます。

これまで学校で学んできた歴史とは全く違う観点から語られる外国人と日本の関わり方の話はどれも興味深く、多種多様な文献や、詳細なデータを列挙した解説は信頼できるものでした。

並行して読んでいた「日本はどう報じられているか」において、国際関係における経済、安全保障のために、海外に向けた戦略的な情報発信を行う必要性が説かれていましたが、まさに観光もその一翼を担う事業と言えるのではないでしょうか。
観光とは単なる娯楽ではなく、国にとってすれば外貨獲得の重要な手段であり、その国をイメージ付ける戦略として考えるべきことなのでしょう。

バブル期に日本が外国(主にアメリカ)との経済摩擦を考慮して訪日外国人誘致に消極的になったタイミングと、バブル崩壊後に起きた日本のイメージ低下(日本異質論の残滓)は無関係とは思えないのです。

政府は外国人観光客の更なる増加を目標にしています。
幕末から「外国人が見たいもの」と「日本人が見せたいもの」には大きなギャップが連綿として続き、その理由として根本的な徹マーケティングの不足を挙げ、これが水モノである観光産業のリスクヘッジにつながることを説いています。

昔、地方へ税金をばら撒いた結果、日本各地にくだらない建造物が乱立し、当然のごとく無駄遣いに終わりました。当然地方としては県外からの来客数増のために行ったことでしょうが、何も考えず、見せたいものを作ろう考えよう、の結果です。

斜めに見たことを書きますが、よくある広告屋のように、「おれたちが流行を作る」という奢った考え方ではなく、今求められているものを丁寧に分析して現状を把握し、ニーズとトレンドに沿ったPRを油断することなく行って行くことが大事なのでしょう。

この本の主題とはズレますが、ミクロに考えると、これは人とのコミュニケーションにおいても同じことが言えるな、と読みながら思った次第です。

多くの面で新たな視点を与えてくれる良書でした。

2019年2月17日

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〈要約〉
日本はアメリカによって指導された自虐的な教育によって、アジア各国に恨まれていると考え自国を誇れない人達が多いが、現実ではアジア各国から敬愛されている。日本は真面目で誠実で信頼される国なのだ。自虐史観を捨て、自分たちの国と文化に誇りを持つべきだ。

〈感想〉
アジアを中心にボランティア活動をしている著者が、海外の人たちと触れることで感じた「アジアの国々から見た日本」をまとめたエッセイ集です。
エッセイをまとめたものなので、多少の文脈の揺らぎは仕方ないにしても、文章はやや散漫的。「この話、他のところでもしてなかった?」「この話って、この章のテーマに合ってる?」というところが体系的に読むに当たっては少しわかりづらくありました。

内容としては、なかなか聞くことができないアジアの方々の日本に対する耳のいい生の声を知ることができる、その点についてはとても素晴らしい内容でした。第二次世界大戦以前から現代までに日本がアジアの国々に対して行なっている様々な支援活動においてアジア各国から非常に感謝されているという話は、著者の狙い通り日本を誇りに思う気持ちが高まってきます。他の方も書いていますが、パラオのペリリュー島のお話や、2つの位牌を持って昭和天皇と対面した女の子のお話では泣きました。。

ただし、著者は己の信念のもと行動しているある意味とても素直で正直な方なので、好意的に思っていないものに対しては下品な表現、偏りが多々見られます。

著者は沖縄で生まれ育ち、アメリカからの理不尽な差別を多々受け、且つ、いわゆる自虐史観が強い教育により日本人としてのアイデンティティに悩んでいました。その後、ボランティア活動においてのアジアの人々との交流によって日本が感謝されていることを知り、日本人としての自分に誇りを持っていった。そうした実体験を元に、読者に対して、「日本人は日本にもっと自信を持っていいんだよ、誇りを持っていいんだよ」と啓蒙しています。

著者の意図としては、
1.自虐史観に学ばされる日本人は日本に誇りを持てず悩んでいる
2.実はアジアの各国から日本はこんなに賞賛されている
3.だから日本人は誇りを持つべき
4.そのため日本はこうあるべき
というストーリーで啓蒙を行っていきます。
そこに著者の思想としての愛国が散りばめられるため、特に4においてはかなり右寄りに偏った内容(天皇崇拝や軍隊保持)になっていると感じました。その意味では、外国の方から見た日本の姿を知りたいと思って本書を手に取る方は、本書の内容全てを鵜呑みにするとかなり思想が偏ります。「右寄り、右翼的」という表現の疑義(保守=右翼なのか?)については著者が本書内で触れています。その内容に私は肯定的ですが、取り上げる題材とその裏に見える著者の思想に偏りを強く感じるため、敢えて右寄りと表現しました。「日本人の誇り・アイデンティティ」をテーマにすると天皇や自衛隊に対して触れざるを得ないのかもしれませんので、批判するつもりもありません。

残念なのは、日本人の誇りを取り戻すために書かれたはずの文章なのに特定の国に対して侮蔑的な表現がなされていることです。昨今の世界情勢に対して色々言いたいことがあるのはわかります。だからといって相手を貶めて良い訳ではありません。相手がこちらを貶めたとしても同じ土俵に乗ってしまうのであれば第三者からは同じ目線で見られるだけです。
あくまでも公平に冷静に客観的に物事を判断し、淡々と行動すべきことを行動すべきで、「日本に誇りを持つ日本人」を増やすために感情的な表現を使っているのであれば、その「誇り」とはその程度のものなのか、と考えざるをえません。ただし、著者は政治家でもなく学者でもない一般人ではあるので、そういった人が書く分には市井の1人の一意見として参考になります。
著者の...

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2019年1月25日

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読書状況 読み終わった [2019年1月25日]
カテゴリ 国際関係

〈要約〉
かつて日本は世界からあこがれを以って見られる国だった。だが長く経済が停滞した現在、奇異な目で習慣・文化が評価されることが多い。高く評価される日本人は、その人の個性が評価されているのであって、日本が評価されているわけではない。事実を客観視し可視化した上で現実の日本の低迷という問題の解決策を考えるべきだ。


〈感想〉
一読しての評価としては、ラスト手前までが残念。ラストは納得。
全体としてはやや残念、という感想です。

私自身がほとんど海外に行ったことがなく外国人の友人もいない為、客観的な外国からの視点での日本人観を知らず、また、この本に書かれている通り昨今のテレビや書籍での「日本礼賛」な兆候に違和感を感じていたこともあり、外国の人からの本当の日本人観を知りたかった為にこの本を手に取りました。

最終章である第5章と「おわりに」で語られる海外から評価される日本人についての記述、および日本礼賛に走る現状に対する問題提起はスッと腹に落ちました。

ただ、そこに至るまでの日本に対する外国からの評価の記述について、根拠が「海外暮らしが長く」「海外で仕事をしていた経験があり」「海外の人と多く接してきた」という著者の主観による情報が中心であり、根拠に乏しい。アンケートを取ったわけでもなく、定量的な根拠を示さず、「あー、確かに周りの外国人によく言われるなー」という著者と著者の周囲の外国人談である日本人観を並べています。それに対する著者の「日本ってこうだから」という考えが20年前ならいざ知らず現在の日本の状況とはかけ離れていると感じる点が多々ありました。さらに言うと、外国人の視点というものの、ほとんどが欧米の方々の視点のお話で終始しており、アジア・アフリカなどの国々の方々からの意見について記述がありません。そのことが情報の満足感に欠けます。

なによりも、文章に軽率さが感じられたのが最も残念に思った点です。敢えて意図した書き方なのかもしれません。第5章ではそのように感じることはなかったので。
特に前半の章まではネットの個人ブログを読んでいるかのような、気を衒った上から目線な言葉で、ネットユーザーから注目を浴びたがっている炎上商法のような書き方だな、そんな感覚を覚えました。
(舌鋒鋭いツイッターが人気な著者らしいので、そんな書き方になっているのかもしれません。)

とはいえ、第5章以降はきちんと海外から評価される個人(日本人ではなく個人)や尊敬される日本文化にも触れ、そこを起点に今の日本の問題点と、このまま日本が進み行くことへの警鐘を鳴らしている点はきれいにまとまっていると思います。

とにかく、最後がまあまあだと思うだけに、そこに至るまでの無根拠な情報と残念な文章のため、単なるネタ本のように感じられてしまうのが残念だった一冊です。。

2019年1月18日

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読書状況 読み終わった [2019年1月18日]
カテゴリ 国際関係
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〈要約〉
日本は自信を取り戻し世界に向けてリーダーシップを発揮してほしい。欧米方式の不平等な利益分配は、貧しさによる争いを引き起こす。地球を1つの共同体として考え、公平に利益を生むようにするべきだ。それができるのは経済規模と富があり、世界水準の技術力を持っている日本だけなのだ。

※140字前後で要約しているため、内容が抽象的になっています。


〈感想〉
どんな本か。
例えば、あくまで例えるなら。

僕のお爺ちゃんが昔、会社の社長をやっていて、著者はお爺ちゃんの会社に世話になっていた取引先会社の現社長さんである「マハ爺ちゃん」だとする。
マハ爺ちゃんは必死に努力して、会社を大きくしていった。

僕のじいちゃんとマハ爺ちゃんは家族ぐるみのお付き合いをしていた関係で、僕も小さな頃からマハ爺ちゃんに可愛がられていた。

僕も大人になり、家業とは別な会社に就職。
社会人を10数年経験し、改めて自分の人生を振り返り始める。
今の仕事を続けていいのか、本当は何がしたいのか、何が不安なのか、何が不満なのか、僕はこれからどこへ行くのか。

そんな時に、十数年間ぶりにマハ爺ちゃんと飲みに行くことに。

立派な会社の社長であるマハ爺ちゃんとの2人きりの食事。
こちらはといえば、なんとなく心が定まらず、霞みがかった焦りに苛まれた僕。

お酒を進めながら、とりとめのない世間話の中で、仕事の話になる。

マハ爺ちゃん「どうなんだ、仕事の方は。」

僕「うーん、いや、実は。最近いろいろ悩んじゃっててさ。迷子中なんだよね。こんな感じでさ・・・」

一通り話を聞いてくれた上で、

マハ爺ちゃん「なるほどな。いいか、お前な?おれが若い頃は、お前の爺ちゃんにこんなことを教えてもらって、そのおかげでおれは今こうして1つの会社を経営しててだな、お前にもお前の爺ちゃんの血が流れてるんだよ。うだうだ考えてる暇があったら、まず行動してみろよ。」

と言われ、改めて自分のことを見つめ直す。

そんな本です。例えるなら。


昔お手本としてお世話になった日本の、現在の若者に向けたメッセージとして金言が並びます。
国を経営しているお爺ちゃんからのメッセージなので、当然小言が多い。家族を大事にしろ、国を大事にしろ、茶髪、ピアスなんてもっての外だ、アジアよりも欧米が優れてるだと?ふざけんな!そんな堅苦しく、反骨精神満載な言葉が散りばめられていますが、私達日本人に対しての愛情と、将来に対する期待を持って発破をかけてくれる。
頑固なだけではなく、きちんと話を聞いてくれた上で真剣に言葉を投げかけてくれる、そんな愛すべきお爺ちゃんが書いてくれた本です。

(不敬な表現ですみません)



2003年初版の本のため、書かれている国際情勢(特に中国や北朝鮮について)は2019年1月現在と乖離している点はあります。
ただ、行動力と不屈の精神を以って長い間一国のトップを務めた(現在は返り咲いていますが)1人の人間の言葉には計り知れない重みがある。

私達が暮らしている現代は、欧米文化が中心であり、メディアで目にする海外のニュースも欧米式の考え方というフィルターを通した情報を真実として受け止めるという土壌の上に成り立っています。
その思考回路が偏ったものであることを、アジアの視点、イスラムの視点、国のトップの視点からの批判を読むことで気付かせてくれました。

ただ、中国・北朝鮮に対する見込みの甘さや、欧米に対して批判のみであり公平になりきれていない点など、そこに偏りを感じます。
また、貧困からのテロなどの問題解決の方法を地球税(マハティール氏の例えなのでしょうが)による富の分配などでまとめていることから、即実現できる対処法ではなく理想論に近く、それを日本に求める理由も根拠としては抽象的なものでした。

この点から...

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2019年1月14日

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