邪馬台国をとらえなおす (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2012年4月18日発売)
3.37
  • (2)
  • (6)
  • (8)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 87
感想 : 8
4

 本書は、邪馬台国についての現在最新の知見を紹介したものとして実に興味深い良書であると思った。
 日本の弥生時代や古墳時代の年代が「放射性炭素年代測定法」や「年輪年代測定法」により大幅に時代がさかのぼっていると判明してきているとは聞いていたが、それにより邪馬台国がどこにあったのかについての本書の考察は面白かった。
 「箸墓」の周壕土器の年代が西暦240年~260年となると卑弥呼の死去の年代にあう。では箸墓は卑弥呼の墓なのだろうか。その本書の考古学的検証は興味深い。
 本書では、「魏志倭人伝」などの中国の文書資料や、当時の東アジア情勢、そして「鉄と鏡の考古学」や「土器と墓」等を関連付けて、専門的かつ詳細な考察を展開しているが、どれも説得力がある。
 特に年代がわかってきている土器について「土器だけが歩いてくるわけはない」とはまさにその通り、人と共に土器は移動したのだろうと思えた。
 では、箸墓の纒向遺跡は邪馬台国なのだろうか。本書は、その可能性の高さと共に、否定的な発見もとり上げている。纒向遺跡では「木製の輪鐙」も出土しているが、「魏志倭人伝には邪馬台国では牛馬はいない」との記載があるというのだ。
 最終的な本書の結論として、「今の考古学的資料はからは奈良県桜井市箸墓古墳が卑弥呼の墓と断定できる状況にはないと言わざるを得ない」との結論は面白かった。最新の知見でも、いまだ邪馬台国の所在地は謎なのだ。だから古代史は面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年5月30日
読了日 : 2012年5月30日
本棚登録日 : 2012年5月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする