冒頭───
雨粒が窓を叩く。外は冬の嵐だ。雲は重く垂れ込め、ビルの谷間で風が唸る。
雨粒はリズミカルに窓を叩く。まるで気短なノックのように、数知れない小さな拳が、古びた木枠のなかで傾いだガラスを叩く。
パテが痩せてガラスの傾いだ窓の内側には、幼い女の子が頬杖をついていた。額と鼻の頭が、ほとんどガラスにくっつきそうだった。隙間風に、女の子の不揃いな前髪がときおりふわりと舞い上がる。
──────
苫小牧で左足の親指が切り取られた被害者が発見された。
秋田で発見された被害者の遺体は右足の薬指が切り取られていた。
三島市で発見された遺体は、被害者の中指が切断されていた。
四件目の被害者は、右足の膝から下が切断されていた。
そして、五件目の被害者は───。
サイコキラーによる連続殺人事件の発生。
犯人は誰なのか?
さらには、廃ビルの屋上に取り付けられたままのガーゴイル像。
その像は、ときどき位置や顔の向きが変わっていると言う。
意志を持って動くかのような恐ろしい姿の謎の像の正体は───。
サイバーパトロール会社『クマー』でバイトをしている大学生の三島孝太郎は、事件を解決しようと行動を起こすが……。
さまざまな謎を残しながら、事件は急転し、下巻へ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宮部 みゆき
- 感想投稿日 : 2015年2月4日
- 読了日 : 2015年2月4日
- 本棚登録日 : 2015年2月1日
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