あやしい探検隊北へ (角川文庫 し 6-7)

著者 :
  • KADOKAWA (1992年7月1日発売)
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本棚登録 : 417
感想 : 18

<「北へ」の一言で読むのを決めたのだった>


 平成4年の初版と出会ってから相当な年数が経っていますが、いまになって「あとがき」を読み飛ばしていたことが判明。→再読!

(「あとがき」は、探検隊に属していた男たちの消息をうかがえて、人生というやつにしみじみしなくもない読み物として楽しめました。なぜ読み飛ばしたんだろう。忘れただけか? 当時の自分に問いたい……)

 この本を読むかどうかは、タイトルの後ろについた「北へ」の一言で決めたことでした。
 なぜなら、旅好き、冒険好きなかたは、南へ向かうことが多いからです。楽園のような南国で、宝石のように輝く海の色など眺めながらの快適な旅行も楽しそう。ですが、南と旅行という言葉のコンビには、私を警戒させる何かがひそんでいます。
「リゾート」「観光地」の、お客慣れしていそうな気配への警戒です。北も北海道まで行くと少し警戒。東北~甲信越辺りの、失礼ながら地味さにどこか惹かれます★

 本書で、椎名誠とあやしい仲間たちは、主に新潟の粟島行きを繰り返します。当時の粟島は、景色はよくても非常に不便な、正真正銘の田舎だったよう。天候に恵まれない日に一行が渡島してしまうことも相まって、メンバーの顔色の悪さ、おやじの脂くささ、不衛生さはいっそ見事なほどです。
 いい加減なのもいい。アウトドアはお金をかけるとつまらなくなる気がします。金遣いを楽しむような綺麗な旅行記に嫌気がさす人なら、こちらの世界に賛同するはず!

 途中、椎名隊長もついに優しい南の島ビームに当てられ、磁石が狂いだしますが、みなの冷たい視線に引き戻されて、再び北へのアタックが始まります★ といっても、これまで以上に適当な計画で車を走らせ、行く手に雪がちらつき始めたところでおしまい。この中途半端さこそが、あやしい東ケト会には似合います。
 この話の続きが別の本に引き継がれているのか知らないのだけど、知らないままでいるのも面白そう!?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: はっぴゃくじ@Review Japan掲載書評
感想投稿日 : 2011年4月1日
読了日 : -
本棚登録日 : 2009年10月1日

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