<10年ぶりに下巻に手をつけて決着へ!>
上巻があまりにも汚らしくて愚かじみて暗く、以後10年ほど放置していた『夜の果てへの旅』! ようやく下巻にたどりつきました★
その後のバルダミュは、しばし異国を転がり歩きます。アフリカへの旅では「人間が怖い」と感じ、アメリカ暮らしでは「文明都市が怖い」と感じ、どこでも不快な体験をしては病んだ反応を繰り返す……。バルダミュのクズ男ぶりは健在でした★ いちいち屁理屈と言い訳が多くて、面倒くさい奴なのです。一方で、翻訳の影響もありそうですが、不思議とリズミカルな名調子で畳みかけてくるから、妙に面白く読めちゃったりする★
ただ、この文明社会とかいうのは、おかしなところに違いありません。社会に適応し切れる人間のほうが怖いよな~というのが、至極まっとうな見方だと思うのです。そうは言っても、文明社会の出身者にとっては、今そこにある社会に適応しようとしない人間というのもまた、恐ろしげで野蛮に見えることが多いわけですが……
下巻で、バルダミュはパリに戻って真面目な医者となります。しかも、自ら進んで困窮者を診療するのです。けれども心の奥底は変わらず、社会も人間も信じられない。ゆえに、またしても面倒くさい文句をぶつくさ宣います★ 彼は、どこで何してても何がしかを嫌悪する達人なのですね!
さて、これほどバルダミュがあちこち移ってきたのに、ずっと彼につきまとい続けてきた悪友・ロバンソンなる存在がいるのです。善行と言えるような行為をしながらも人間不信のバルダミュと、ためらうことなく悪事を目論むロバンソンの腐れ縁★ この二人に別れの刻がやってきます。
バルダミュその人が世に絶望して破滅するのではなく、彼の影のようだったロバンソンが自ら過失を犯して消えていった。そんなにすっきりするような終わり方ではなかったけれど、この終幕は、バルダミュの病んだ部分がとれたことを意味しているのでしょうか……?
- 感想投稿日 : 2022年9月19日
- 読了日 : 2009年5月21日
- 本棚登録日 : 2009年5月21日
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