犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (1972年6月12日発売)
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犬神財閥の創始者・佐兵衛の遺言状。それは遺産相続争いを生む火種だった。それを予期した弁護士事務所の若林は金田一耕助に協力を要請するも殺害されてしまう。見立て連続殺人の中で、一族の悲劇が紐解かれていく。

ぼくが初めて読んだ横溝正史作品。1950年の作品とは思えない読みやすさ。単語は少し難しいものがあるものの流れで意味を汲み取れる範囲。文章は情報が整理されていて、展開もサクサク進んでいく。人間関係がドロドロしてて読み辛いかなという不安は、読んでみると表現のドライな読み心地が良かった。金田一のキャラも効いてる。まあドロドロはすごくしてるけど(笑)

ミステリとしての仕掛けも丁寧。いわゆるトリックを暴く系のロジカルな作品というよりは、一族の心情が事件によってさらけ出されていく描写が巧み。誰かのためを思った行動がジレンマを呼び起こしていく連鎖に唸った。仮面を被っているのは佐清だけではない。一族すべてが本当の顔を隠している。仮面が剥がれ本音が明かされる時、事件もまた自然とほどけていく。

それにしても佐兵衛が諸悪の根源すぎる。一族が屈折するのもやむなしという感じだし、本人は筋を通したつもりだろうが巻き込まれた人たちもいい迷惑。最後が「大団円」ってあるんだけど、イイハナシカナー?ってなる。納得できない一族の人いるよなあ。ひと悶着ありそうだけど、孫の代からは血統の呪いから解き放たれて幸せになってほしいね。

余談だけど、『ファミコン探偵俱楽部 消えた後継者』はこの作品からかなり影響を受けて制作されていて、比較してみると面白い。ファミコン時代ながら謎解きもドラマも魅せてくれる作品になっているのでそちらもお薦め(5月にはリメイク版が発売予定)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年3月7日
読了日 : 2021年3月7日
本棚登録日 : 2021年3月7日

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