プシュケの涙 (メディアワークス文庫 し 3-1)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス (2010年2月25日発売)
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本棚登録 : 3080
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夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した。吉野彼方はなぜ自殺したのか?その真相を探るため、変人と呼ばれる美術部員・由良と、落下する吉野を目撃した榎戸川が調査を始めるが──。読むほどにやるせない青春小説。

自殺の謎を追うミステリというよりは、青春小説という味わい。あくまで青春小説の中にミステリの仕掛けがスパイスとして効いてくる。提示される謎はシンプル。でも、だからこそその真相へ辿り着こうと情熱を注ぐ由良の熱に、謎という氷がじわじわと溶け出していく感触が生々しく伝わってくる。すべてが明らかになった後の軽薄で残酷な現実。いろいろと出来すぎなんじゃないかというキャラ造形と設定ながら、現実の不条理さって意外とこんな感じかもしれないとも思った。

印象深いのはやはり構成。再読のはずが、完全に忘れていて初読の衝撃を味わってた(笑) こういう構成にしたからこそ、吉野彼方の死というものが鮮やかに、そして生々しく色づいていく。まるであの完成しない絵を完成させるための物語のようで切ない。変人の由良がとった不可解な行動など、すべてに意味があったということが痛いほど伝わる。地面へと落下していく時間を体感するような絶望。でも、そこにはわずかな希望があったというのが救い。どこまでも透明で純粋な毒を飲み込んでしまったみたいな読後感だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年11月24日
読了日 : 2022年11月24日
本棚登録日 : 2022年11月24日

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