ホワイトアウト (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1998年8月28日発売)
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日本最大の貯水量を誇るダムが、武装グループに占拠された。その要求は50億円!猶予は24時間!荒れ狂う吹雪の中で、ダムの運転員・富樫が立ち上がる!自分の過失で亡くした友の婚約者を救うために──。

2000年に織田裕二主演で映画化されたアクション・サスペンスの傑作小説!ぼくは映画館へ見に行って、そこから小説も読んでかなりハマっていた作品だった。久しぶりに再読したい!と購入。あの時の感動は色褪せないまま!人の命なんてたやすく吹き消す山の大自然と吹雪。その美しさも恐ろしさも深々と描かれていく。

ダムとそこにいる友の婚約者を武装グループから助け出す!その真っ直ぐなテーマの熱が600ページを超える物語の厚みをめくる指先を止めさせない!敵はダムを占拠し、山の利を活かして要塞を築き上げた。それを持ち前の知識だけを武器に戦う緊張感で、こちらの息まで凍りそうになる。

大迫力のアクション!絡まり合う思惑!山に生きる人間ドラマ!そこにミステリのスパイスで視界は白い靄の中へと閉じ込められる。そこで問われるのは、己の生き抜こうとする意志なのだ。それにしても、富樫がタフすぎて吉岡もびっくりしてることだろうなあ。

最後に印象深い文章を引用して終わります。

p.323
疲労感はあきらめと弱気を呼び寄せる。冬山の遭難では、最後まで生き延びようとする強固な意志が何よりも大切だった。意志を失った時、人は人でなくなる。

p.588
奥遠和の大自然に比べれば、人一人の存在などは塵のようなものかもしれなかったが、そんなちっぽけな人間にも、生き抜こうとする意志はある。

p.598,599
幾多の登山家たちがたどった運命だと思えば、あきらめもつくだろうか、と考えた。
いや──つきはしない。山で死ぬのは本望だ、と言う登山家がいないわけではないが、最初から死にたいと思って山に向かう愚か者はいない。本望と結果は違った。覚悟と観念では、意味が違う。一パーセントの生への執念が残っていれば、最後までそれに賭けるのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年1月17日
読了日 : 2023年1月17日
本棚登録日 : 2023年1月17日

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