人見知りな小説家・高代槙生(こうだいまきお)と、事故で亡くなった姉の娘・田汲朝(たくみあさ)との同居生活が描かれる作品。
葬式で朝が親戚間をたらい回しにされているのを見過ごせず、人見知りであるのも忘れて勢いで朝を引き取った槙生。不器用ながらも誠実に朝と接する槙生と、悲しみを実感できないまま新しい生活が始まって戸惑う朝のやり取りにリアリティを感じる。丁寧に描かれる生活感があるからこそ、心理描写やドラマが切実になるんだなと。
時々顔を出す詩的な表現が物語性を深めていて好き。不器用な女王と子犬のような王女。二つの国が一つの部屋で暮らす、静かであたたかな物語。
叔母の槙生と姪の朝。この二人の関係性はもちろん、槙生と友人たちとの大人同士の友人関係がまた魅力的。槇生と笠町がお互いに感情的にならずに感情を伝えるところに憧れるね。言葉の選び方、間の作り方が丁寧だなと感じる。
好きな言葉たち。
「日記を…つけはじめるといいかも知れない この先 誰が あなたに何を言って…誰が何を言わなかったか あなたが今…何を感じて何を感じないのか たとえ二度と開かなくても いつか悲しくなったとき それがあなたの灯台になる」
「アサガオの観察日記なんか大人になってからやった方が楽しいに決まってる」
「あなたは 15歳の子供は こんな醜悪な場にふさわしくない 少なくともわたしはそれを知っている もっと美しいものを受けるに値する」
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2019年10月1日
- 読了日 : 2019年5月8日
- 本棚登録日 : 2023年8月10日
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