イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

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  • 岩波書店 (1991年6月17日発売)
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“言い換えますと、イスラーム法とは、神の意志に基づいて、人間が現世で生きていく上での行動の仕方、人間生活の正しいあり方を残りなく規定する一般規範の体系でありまして、それに正しく従って生きることがすなわち神の地上経綸に人間が参与することであり、それがまた同時に神に対する人間の信仰の具体的表現となるのでありまして、その意味でイスラーム法がすなわち宗教だといわれるのであります。“

例えば日本文化について3つのテーマから述べよ、と言われたら、仏教や神道などの宗教をテーマの一つに選ぶことはあるだろう。
しかし、法について、というのはどうだろう。
ちょっと思いつかない。
漠然とした「文化」なるものをどう切り分けるか、そこに各文化の特色が表れているとしたら、私たちの文化とどう異なっているのか、というのが本書を手に取った動機だった。
テーマは別れているが、副題の「その根底にあるもの」についての切り口が異なるだけで、常にイスラーム文化の核を見定めようとする姿勢は一貫しているのだと読み始めて気がついた。
期待以上の内容。


読書メモ
① 宗教
001 イスラーム文化の国際的性格と複雑な内部構造
002 「砂漠的人間の宗教」という誤解
003 商業専門用語に満ちた聖典
004 商業取引における契約との類似
005 アラブ(スンニー派的イスラーム)とイラン人(シーア派的イスラーム)
006 すべてのイスラーム的なものを集約する聖典『コーラン』
007 イスラーム文化は究極的には『コーラン』の自己展開である
008 『コーラン』と『ハディース』、第一の啓示と第二の啓示
009 『ハディース』というプリズムを介した『コーラン』の解釈の多様化
010 『コーラン』の解釈学的展開こそイスラーム文化の形成史
011 『コーラン』の特徴①神の言葉のみを綴った単一構成の書物
012 その②聖俗不分、「神のものは神のもの、カエサルのものも神のもの」
013 坊主のいない宗教
014 神と人の垂直関係と「預言者」という中間項
015 「イスラーム」=「絶対依嘱」
016 「子もなく親もなく、これとならぶもの絶えてなし」
017 非連続的存在観と原子論的存在論、因果律の存在しない世界

②法と倫理
018 「コーランの歴史」20年、前期メッカ期と後期メディナ期
019 「神の倫理学」
020 メッカ期の不義不正を罰する復讐の神
021 「怖れ」=「信仰」
022 メディナ期の慈悲と恵みの神
023 「感謝」=「信仰」
024 イスラーム教徒、嘘つかない
025 実存的宗教から社会的宗教、個人から共同体へ
026 砂漠的人間の精神(血の連帯感)の廃棄
027 「物を盗んではいけない」は神がそれを悪いことと決定したから
028 「最後の預言者」の死と「ハディース」による補完
029 神の言葉という非合理的な啓示を合理的思惟によって解釈する
030 神の言葉そのものではなく、それを理性によって合理的に解釈したものこそがイスラーム法である
031 我々の法律は普段法の網の中にいることを意識せず、法が出張る事態となって初めてその存在に気がつく
032 イスラーム法は規範として常に意識される
033 自由解釈の禁止
034そしてイジュティハードの門は閉じる

③内面への道
035 二つの「知者」、ウラマーとウラファー
036 ザーヒリー的イスラーム、バーティニー的イスラーム、顕教と密教
037 シャリーアとハキーカ、イスラーム法と内面的実在性
038 二つの「内面への道」
039 シーア派的イスラームと神秘主義的イスラーム(スーフィズム)
040 シーア派のイマーム=内面的預言
041 外的啓示は終わったが、内的啓示は続いている
042 十二代目イマームの蒸発
043 「小さなお隠れ」と「大きなお隠れ」
044 不可視の次元、精神の王国の支配者

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年5月26日
読了日 : 2020年5月26日
本棚登録日 : 2020年5月26日

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