音楽小説のおすすめとして紹介されたので興味を持って読んだ。何度も口に出したくなる弾みのあるタイトルで、ドビュッシーのことはよく知らなかったが好きになった。
音楽ミステリーと評されていたが、所詮音楽がテーマの物語なんて小綺麗な青春が紡がれているのだろうとたかを括っていたのだが、心の底から読む前の自分のたかをほどいてぶん殴ってやりたいと思った。そこに描かれていたのは紛れもないミステリで、得体の知れない恐怖さえ感じたほどである。いい意味で大幅に予想を裏切られたのである。
タイトルの通りドビュッシーのピアノ曲が登場するが、あまり聞き馴染みがなかったので聞きながら読んでみた。特に取り上げられるのは「月の光」と「アラベスク」である(正しくはもっとちゃんとした曲名だったと思う)。主人公が言っている通り本当に鮮やかな情景が目に浮かぶようで、こんな曲と出会うきっかけになっただけでも読んで良かったと思えるくらいである。もちろん作品内でとても上手く端的に文章に曲のイメージを落とし込んでいたからこそ、これだけ心が動いたし、これが曲を解釈するということかと新しい世界を除けた気がした。
最後の最後まで謎の形がぼんやりとしか浮かんで来ず、底しれぬ怖さを感じた。主人公以外の人物もとても魅力的であり、岬先生に対しては主人公たちと同じように憧れの目で見ていた。他の作曲家をテーマにした作品もあるらしいのでどんどん読みたいと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文芸書
- 感想投稿日 : 2021年5月8日
- 読了日 : 2021年5月4日
- 本棚登録日 : 2021年5月4日
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