太宰治にしては設定に関わらず不思議に明るい2作。いずれも主人公が20歳前の青年だからであろう。
’’正義と微笑’’は芹沢進という主人公が一高に落ちてR校(立教?)に合格したものの幻滅して、姉は嫁ぎ先と実家との不仲に落ち込み(もっとも杞憂だったが)、結局は主人公はR校を辞めて当時でも明らかにアウトローな存在の役者に邁進するという、モラトリアム人間を描いた話。でも話が完結しているのと、これを戦時中に執筆したという点に満足。
’’パンドラの匣’’はひばりという主人公が健康道場に入院している間、竹さんという看護師とマア坊という看護師をめぐっての三角関係のようなものを展開した話。終戦直後に書かれている。恋の駆け引きの際のやりとりが太宰治の女性観を表しており、時代は違えど夏目漱石の’’明暗’’に通じる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
純文学
- 感想投稿日 : 2020年2月26日
- 読了日 : 2020年2月26日
- 本棚登録日 : 2020年2月26日
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