フォローさせていただいているレビュアーさんのおススメで読んだ一冊。
冒頭の文章が素晴らしい。
この冒頭一ページに書かれているのが、全体を通しての〈時間と記憶〉の観念であるとともに、たぶん底に流れるテーマでもあるのだろう。
主人公・山崎にかかってきたかつての恋人由希子からの19年ぶりの電話。
そこから山崎の視点で過去の回想と現在を往き来する構成で、恋愛や敬愛する人の死が語られる。
ひとつひとつの出来事が、その都度だと過剰だと感じるのだが、読み進めるとその後に続く出来事の原因になっており、必然だったのかと納得する。
文章は手入れの行き届いた山崎のアクアリウムのように透明感があり、村上春樹を彷彿とさせる。(といっても長い間、村上春樹を読んでいないので的外れな印象になっているかも)
残念だったのは、由希子と「可奈ちゃん」の正体について話す場面。
はっきりした名前は出さずにほのめかすだけでよかったのに、と思った。
可奈ちゃんの手紙だけで読者が驚くには十分こと足りる。
読んでいる間中、頭の中で前半はThe Policeの♪Every Breath You Take、後半はThe Beatlesの♪Across the Universeが流れていた。
(直前に読了した『虹果て村―』と曲は違えどまさかのポリスかぶり)
音楽を聴くという目的以外で音楽を流すときはわたしも極小さな音量でかける(山崎の「意識に届く前に消える」よりは大きな音かもしれないけれど)ので、妙なところで山崎に親近感を覚えた。
- 感想投稿日 : 2013年3月20日
- 読了日 : 2013年3月19日
- 本棚登録日 : 2013年3月19日
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