「ずっと、逃げてるんだ。そばにいても、離れても、変わらない。俺たちは、これからだって、二人きりで、逃げているんだ……」ーー私の男
親子のおはなしと言うには、あんまりに汚れていて、きれいじゃない。
どろどろしていると言うよりは、肉のようにてらてらと光っているようなイメージ。
私の男は、単純に言ってしまうなら親子の近親相姦のお話。
幼い頃家族を失った花と、花のほんとうの父親である淳悟が、出会って、別れる。
彼等の人生をすこしだけ切り取ったアルバムを眺めている様な、そんな作品です。
話の構成が面白く、花と淳悟の別れから物語は始まります。思い出を振り返るように、アルバムを遡っていくように、ただ淡々と場面が移り変わる様は、まるで他人の走馬灯を見ているようです。
別れの後に、出会いが書かれるこの小説。
読みごたえはもちろんあります。他人の人生を見ているようなものですから、内容はすごく濃密です。
ただ、惜しむらくは、これが親子の近親相姦の話であったことです。
自分はそのあたり気にせずに読めましたが、嫌な人はほんとうに嫌なのではないかと。
いや作品は、素晴らしいのですが。
よくも悪くも、読み手を選ぶ作品かなぁと、思います。
読後感はとても良いので、オススメです。きっと読めば、彼らのために、祈りたくなるはず。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2010年12月1日
- 読了日 : 2010年11月29日
- 本棚登録日 : 2010年11月29日
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