それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2016年6月26日発売)
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今年の夏はこの本を読んだことで、大きなセミナーを体験したと自分を慰めたいと思う。人生いつ迄経っても勉強ではあるが、優秀な中学生や高校生に混じって「えっ⁉そんな質問にも反応出来るの!」と驚きながら勉強出来るのは、なんか気持ちが若返ったような気がした。

加藤陽子先生も驚いていましたが、満州アンケートで丸山真男も居たあの東京大学で88%の学生が「満蒙のために武力行使は正当だ」と考えていたそうだ。満州事変が起きる直前、マスコミが大宣伝をする直前の科学的な知識を持った人々の認識です。日中戦争から日米開戦に至る道は、ある意味避けられない処まで行っていたのだと、やはり思ってしまう。

現代の国民の意識はそこ迄はいっていない。しかし、じわりじわり近づいている気がする。現代の尖閣諸島問題と非常に似通っているなあと思うのは、例えば以下のようなところです。
「満蒙に対する意図がずれている点は、軍人たち、事件を起こす政治主体たちには百も承知のことでした。国民の中にくすぶる中国への不満を条約論・法律論で焚きつけますが、実のところ、軍人たちにとって最も大切な問題は、対ソ戦と対米戦を戦う基地としての満蒙の位置づけだったのです」(336p)
本当の意図を隠して国民にわかりやすい不満だけを焚きつけるやり方に、我々は二度までも騙されるのだろうか。

ありもしない核攻撃やありもしない中国の武力侵略の前に、我々は戦争というものに対する常識を、ここで大きく変容する必要がある。アフガンにしても、イラクにしても、アメリカは戦争に勝って相手国の軍事力を無力化しただろうか。相手国を搾取しただろうか。もちろん相手国の土地を奪ったり、軍事駐留することが目的ではなかった。ルソーは言う。「相手国が最も大切だと思っている社会の基本秩序(これを広い意味で憲法と呼んでいるのです)これに変容を迫るものこそ、戦争だ」

だから、(加藤陽子先生はこんなことを言っていませんが)北朝鮮や中国から戦争を仕掛けてくることは絶対にないのです。むしろ、アメリカには「動機」があります。アメリカも日本も韓国も、北朝鮮の憲法を変えたい。アメリカは、中東やアフリカや南米でそうしたい国か山ほどあります。それに日本が手助けをしてくれるならば、大賛成でしょう。

と言うようなことをこの本を読みながら、考えました。もっといろいろ考えたのですが、今はまとまっていません。機会があれば整理したい。

2016年8月21日読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: さ行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2016年8月22日
読了日 : 2016年8月22日
本棚登録日 : 2016年8月22日

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