東京奇譚集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2007年11月28日発売)
3.55
  • (497)
  • (1093)
  • (1510)
  • (207)
  • (27)
本棚登録 : 10628
感想 : 882
4

村上春樹の短編集を再読。
偶然の旅人
村上春樹を語り手に、ゲイであると気が付いた弟が、10年ぶりに姉に電話する話。
ハナレナ・ベイ
シングルマザーのサチは、大切な息子をハワイで失う。サーフィンしていたらサメに食われた。息子の影を追って、毎年ハワイへ。で、片足のサーファーのきく。心が解き放たれることもなく、でも、ハワイの自然はサチを変わらず優しく包み込む。
どこであれそれが見つかりそうな場所で
失踪した夫を探したいという娘。24階住む夫と26階に住む祖母、いつも階段で移動する夫が、26階から出たまま戻らない。階段で待つと不思議な出会いが。老人、少女、時を奪っていく。そして、夫が見つかったという話。
品川猿
人の名前が消えてしまう病、それは猿に名札を奪われてしまったから。学生時代のほろ苦い経験が、心にともし火のように戻ってくる。
大切なことを、失ってしまった主人公たちが、不可思議な運命を逆に辿っていく形でのストーリー。文章一つ一つが糸を手繰るように。
もう戻らないこと、心に戻ってくる暖かいこと、失って初めてわかるその大切さ。奇譚と表現しつつ、日常の中にある奇跡を日常として捉えることで光らせる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年4月7日
読了日 : 2019年4月7日
本棚登録日 : 2019年4月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする