停電の夜に (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2000年8月30日発売)
3.86
  • (132)
  • (122)
  • (171)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 1073
感想 : 133
4

アメリカが舞台でも、インドが舞台でも、インド系移民が登場する話でも、ラヒリが自らと向き合っている姿が垣間見えるようだった。

ピュリッツァー賞受賞のデビュー短篇集だが、既に、何作か書いてきているかのような熟練さを感じた。
そう感じた理由は、物語の設定の目の付け所が、ささやかで、よくそんな所を、みたいな細やかさがあったからだ。

そこに、ラヒリ自身の人生が反映されている様が加わっており、これだけ作家自身のパーソナリティーが小説に表れる方も、珍しいのではないかと思った。
視点を変えれば、それだけ自らと真摯に相対していることにもなる。

日常生活における、異国、移民、異文化間で起こる、悲喜こもごもな出来事。そして結末は、一見、やりきれない哀しさだけが残るようにも感じられるが、そこはラヒリの視点が素晴らしく、ちょっとしたシニカルさで切り抜けたり、おしゃれな喜劇になったり、母国の人がインド系移民の人に大切なことを教えられたりと、なるところに、ラヒリ独特のしたたかさを感じるのである。教えられる結末に関しては、ラヒリ自身の望みなのかもしれないと思うと、なんだか切なくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2020年8月10日
読了日 : 2020年8月10日
本棚登録日 : 2020年8月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする