現実入門

著者 :
  • 光文社 (2005年3月23日発売)
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本棚登録 : 815
感想 : 177
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本書は、人生の経験値が極端に低い(!?)、歌人の穂村弘さんが、美人編集者のサクマさんと一緒に、様々な初体験に挑戦する、連作エッセイ集(2005年3月発売)となっております。

その初体験の内容が、ありきたりであっても、そこはやはり、ほむほむがすると、ウエディングドレスに対する憧れで、峰不二子(そういえばバイク走らせながら着ていた)と、メーテル(黒しか着ない)を連想したり、大相撲観戦で、「あっ、あの、こっこっこっこっこ」と、ニワトリのようになってしまったりで、面白い。

また、占いでの、「りそな姫」の非現実感の高め方の分析の、あまりの的確さに、うんうん頷いていたら、「サクマさんと私の間にも、本当の恋が生まれたりしないだろうか」なんて、心の中で思ったりして、分かりやすいよね、穂村さんって。

でも、その後のエピソードを読んでいくうちに、なんだか、お二人のやり取りも馴染んできたように感じられ、私も次第に、この二人が結ばれればいいのになんて、思ってきました。
まあ、絶対に無いだろうけどね(笑)

また、面白さだけではなく、ブライダルフェスタで涙が溢れる場面や、24年ぶりに祖母に会いに行く場面等、穂村さんの人間味溢れる、心温まるエピソードも印象的だと思っていたら、最後の初体験と、「あとがきにかえて」を読んで、思わず「ええっ!!」って。

そ、そんな、これって、もしかして・・・本当だったの?

ということは、これまで読んできた初体験が全て、穂村さんのかけがえのない、人生の一ページだったってこと?

ほむらさーーーん!!

すごいよ、ドラマティック過ぎる。

なんだか、感慨に浸るというか、呆然自失というか、よく分からない心理状態になりつつ、こんなこともあるんだなあと、改めて、「あとがきにかえて」を読んでみたら、


「えっ!?」

よくよく読んでみると・・・これって、どういうこと?

えっ、えっ、えっ!?

『ほんとにみんな こんなことを?』

『現実のなかで生きられない人間も、だからといって死んでしまうわけではない。現実とは少しずれた時空間で、ずれたまま生きていくのだ』

ということは、一日お父さんでの、ナナちゃんとチイちゃんとの、リアルな会話のやり取りも・・・大人の想像のはるか先を行く、子供の発想力の素晴らしさに感動した私の立場は?

そういえば、はとバスツアーの最後の行為に、「この人は全く・・」って思いと、「こんなこと本に掲載して、サクマさんは大丈夫なのかなあ」って思いもあったけど・・・そういうことだったのね。


ほむらさーーーーーーーーーん!!!


でも、プロポーズのシーン、感動しました。
おめでとうございます(といっても、2005年の話だけど)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2022年10月7日
読了日 : 2022年10月7日
本棚登録日 : 2022年10月7日

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コメント 8件

たださんのコメント
2022/10/07

ネタバレフィルターかけておきながら、実は、私の推測が間違っている可能性があることを、ここに記載しておきます。

このコメントを書く前に、いいねをしてくれた皆様、申し訳ありませんでしたm(_ _)m

私の拙い脳みそで、考えられるいくつかの可能性として、


1. サクマさんは想像上の人物で、全ては穂村さんの妄想。

2. 全てではなく、サクマさんの登場しないエピソードだけは、実話。

3. サクマさんと、穂村さんの実際の奥さんが、別人なだけで、エッセイは全て実話。

4. サクマさんは実在しているが、エピソードによって、現実と妄想が混在している。

5. サクマさんは実在しているが、一つのエピソードの中に、現実と妄想が混在している。


正解が4や5だったら、どうしよう(笑)

しかし、穂村さんの妄想力は侮れず、底の知れない深さもありそうだし・・・どうなんでしょう?

5552さんのコメント
2022/10/07

たださん、こんばんは

私は、4か5がいいかなあ……。
穂村さんの妄想力、現実とはズレた世界を(わざと)幻視する能力ってすごそうですからねえ。
穂村さんって、どこまでがほんとの穂村さんなのか、曖昧で底知れぬところがあるような気がします。
そういえば穂村さんの短歌が中学の国語の教科書に掲載されていることを最近知りました。すごいですね。与謝野晶子さんとかと同列ですよ!

たださんのコメント
2022/10/08

5552さん、こんばんは。

コメントありがとうございます(^_^)

私は、穂村さんの、歌人とは別の素顔を覗くことで、歌人としての異なる見方や、穂村さん自身の短歌を、より深く知るきっかけになるのではないかと思って、なるべく、発売の古い順にエッセイを読んでいるわけですが、今回のような謎に満ちた感覚は、初めてでした。

単純に、全て現実だと思って、「あはは、やっぱり穂村さんは面白いなあ」とも捉えられそうだし、妄想なら妄想で、ここまでの世界観の構築力は凄いなあ・・・というか、シンプルに考えればいいのかもしれませんが、正直なところ、もう訳が分かりません(^_^;)

サクマさんと、穂村さんの奥さんが別の方というのは、確かだと思うのですが、5552さんは、4か5ですか・・・う~ん、でも、色々な方が言ってますよね。ほんとの穂村さんって、なんなのかって。

穂村さんの底知れなさとはこういうことか、と、まだまだ私は、その入口にようやく辿り着いただけなのかもしれませんね。

これからも、穂村さんのエッセイを追いかけ続けようと、思います。

それから、穂村さんの短歌が、教科書に掲載していること、私も知りませんでしたが、確かに、与謝野晶子と同列だと思うと、凄いですね!

でも、私の好きな歌でしたら、それも分かる気がします。
魂と魂とが、まさに共鳴しあうような、そんな歌に出会うこと、ありますものね。

穂村さんの、どの歌なんでしょうかね。気になる。

111108さんのコメント
2022/10/08

たださん、5552さん、こんばんは。
おじゃまさせてもらいま〜す。

この本登録してないですが、けっこう前に読みました。そのため細かい所とかうろ覚えなのですが「あとがきにかえて」を読んだら、たださん同様、
えっ?えっ?えっ?何ーーー⁈
となったのは覚えてます。

その時はびっくりしたのと、穂村さんの歌人としての活動はあまり知らなかったので、私の結論は断然5でした!これで穂村=妄想の達人というイメージできあがりました。

そんな?穂村さんが教科書に載るなんて‥。たださんの「世界観の構築力」や5552さんの「曖昧で底知れぬところ」が歌人としての強みというか魅力なんでしょうね。どんな歌が載るのか本当気になりますね♪

たださんのコメント
2022/10/08

111108さん、こんばんは。

コメントありがとうございます(^_^)

ほむほむ沼の先輩、111108さんがそう仰るのでしたら、もう正解5でいいです(^^;)
5552さん、おめでとうございます。

そして、やっと思い知った気分ですよ、ほむほむ沼の底知れなさを。これだったのですね。

今まで読んだのが、比較的、日常生活の面白さと、穂村さんの趣味嗜好からみた観点が多かったので、本書は完全に油断しておりました。

ちなみに、教科書掲載の短歌、あまりにも気になるので、調べてみたら、ひとつ分かったのは、『シャボンまみれの~』で始まる歌でした。

この歌、よくよく考えてみると、その内容の深さに囚われるような、クラクラした感覚が、私は好きです。

5552さんのコメント
2022/10/08

たださん、111108さん。、こんばんは。

やったー、ほむほむクイズ正解!
私も、111108さんとおなじく、読んだのはだいぶ前です。
世界音痴、で、やられてしまい、新刊が出ると追いかけていました。
エッセイ三冊目は見たことのない変化球を放ってきて、みんな受け止めきれない、みたいな感じ。

「シャボンまみれの~」ではじまる歌も教科書に載ってるんですね。
私は、そういえば、穂村さんの年齢っていくつだったっけ、と、検索したときに、「穂村 ゼラチン」というワードが出てきて、何だろう、と思って調べたら、中学二年の国語教科書に「ゼラチン」ではじまる穂村さんの歌が掲載されているという情報を得ました。
シンジケート、に入っている歌だそうですよ。

111108さんのコメント
2022/10/08

たださん、5552さん、こちらでもこんばんは。

正解5なんですね〜⁈
私も5552さんみたいに実は受け止めきれない気持ちになりました。そして安心しきれないところにも惹かれてます。

今シンジケートで「ゼラチンの〜」を探して読みました。これが中二の子の妄想世界・短歌の懐の深さみたいなのの入り口になればいいなぁと思います。「シャボンまみれの〜」は、これから探してみます。

たださんのコメント
2022/10/09

5552さん、111108さん、こんにちは。

「ゼラチンの~」も、あれこれ考えてしまいますが、この瞬間に、さっと過るものや、ふと気付いたこと、思いが溢れ出すものなどが、あるのかもしれませんね。

ちなみに、「シャボンまみれの~」は、第二歌集の、『ドライ ドライ アイス』に収録されております。

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