ク○○○○絵本特集、その3(今更、隠してもバレバレか^_^;)。
偶然にも『ぐりとぐら』シリーズの二作目になる本書は、上手い具合にそのテーマであり、まあ、表紙の彼らの視線を追っても分かりますよね。そう、美しい鳥を眺めているのです・・・。
ある雪の積もった日、雪合戦をしていた野ねずみの「ぐり」と「ぐら」は、謎の足跡を発見し、いったい誰のだろうと気になって、その後を追いかけてゆくのだが、その辿り着いた先は、なんと!?
二作目にして、おそらくファンにとっては嬉しいであろう、彼らのお宅拝見的な展開が楽しく、その二階建てのモダンな造りも印象的な中、次はこの部屋、その次はこの部屋と巡っていく先々で見ることの出来る、彼らそれぞれの色がポイントになった、家具や日用品にも目を惹かれている内に、最初は、怖々と中に入ってた彼らも、途中で「おきゃくさまは、いったい どこだろう」と言っている時点で、おそらく気付いたのだろうというのが、彼らの表情にもよく現れており(正確には“○くろ”)、そうした丁寧な描写に、絵本ならではの、物語を予測させる楽しさが織り込まれているようで、このような細かい作り込みをされる点は、さすが中川李枝子さん、山脇百合子さん姉妹だと思う。
また、おきゃくさまの、意外と言っては失礼だが、そのダンディなスマートぶりや、彼らのことをよく分かっている手作り感に溢れた心遣いは、目に見えるものとして、いつまでも残るものではないものの、だからこそ、一生思い出に残るような一点ものの価値があるのだと思うし、また、それを独り占めしない彼らの優しさにも心を打たれ、そう、おきゃくさまは、決して彼一人では無かったのですよ。
本書は1967年発売ですが、原書は1966年発売というのを知り、改めて、その物語も含めた作り方に、今でも変わらずに読むことの出来る、モダンな雰囲気があるのが凄いなと感じ、1966年といえば、ビートルズのアルバム「リボルバー」や、ビーチボーイズのアルバム「ペットサウンズ」が発売された年でもあり、その音楽の世界に於いて垣間見えた、新しいものを目指して、少しずつ試行錯誤していく様子ともリンクしているように思われたのが、私には感慨深いものがあって(あくまでも私見です)、その、世界に通じるようなモダンさがありながら、尚且つ、楽しく親しみやすいアットホームさが、いつの時代の子どもの心も、とらえて離さないのかもしれないなと感じられたことが、本書を初めて読んだことによる、ひとつの発見でした。
それから発見といえば、山脇さんの絵にも、後期のそれとはまた違った雰囲気があって、とても新鮮に映りました。
- 感想投稿日 : 2023年12月10日
- 読了日 : 2023年12月10日
- 本棚登録日 : 2023年12月10日
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