ぐりとぐらのおきゃくさま (ぐりとぐらの絵本)

  • 福音館書店 (1967年6月1日発売)
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感想 : 280
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 ク○○○○絵本特集、その3(今更、隠してもバレバレか^_^;)。

 偶然にも『ぐりとぐら』シリーズの二作目になる本書は、上手い具合にそのテーマであり、まあ、表紙の彼らの視線を追っても分かりますよね。そう、美しい鳥を眺めているのです・・・。


 ある雪の積もった日、雪合戦をしていた野ねずみの「ぐり」と「ぐら」は、謎の足跡を発見し、いったい誰のだろうと気になって、その後を追いかけてゆくのだが、その辿り着いた先は、なんと!?

 二作目にして、おそらくファンにとっては嬉しいであろう、彼らのお宅拝見的な展開が楽しく、その二階建てのモダンな造りも印象的な中、次はこの部屋、その次はこの部屋と巡っていく先々で見ることの出来る、彼らそれぞれの色がポイントになった、家具や日用品にも目を惹かれている内に、最初は、怖々と中に入ってた彼らも、途中で「おきゃくさまは、いったい どこだろう」と言っている時点で、おそらく気付いたのだろうというのが、彼らの表情にもよく現れており(正確には“○くろ”)、そうした丁寧な描写に、絵本ならではの、物語を予測させる楽しさが織り込まれているようで、このような細かい作り込みをされる点は、さすが中川李枝子さん、山脇百合子さん姉妹だと思う。

 また、おきゃくさまの、意外と言っては失礼だが、そのダンディなスマートぶりや、彼らのことをよく分かっている手作り感に溢れた心遣いは、目に見えるものとして、いつまでも残るものではないものの、だからこそ、一生思い出に残るような一点ものの価値があるのだと思うし、また、それを独り占めしない彼らの優しさにも心を打たれ、そう、おきゃくさまは、決して彼一人では無かったのですよ。


 本書は1967年発売ですが、原書は1966年発売というのを知り、改めて、その物語も含めた作り方に、今でも変わらずに読むことの出来る、モダンな雰囲気があるのが凄いなと感じ、1966年といえば、ビートルズのアルバム「リボルバー」や、ビーチボーイズのアルバム「ペットサウンズ」が発売された年でもあり、その音楽の世界に於いて垣間見えた、新しいものを目指して、少しずつ試行錯誤していく様子ともリンクしているように思われたのが、私には感慨深いものがあって(あくまでも私見です)、その、世界に通じるようなモダンさがありながら、尚且つ、楽しく親しみやすいアットホームさが、いつの時代の子どもの心も、とらえて離さないのかもしれないなと感じられたことが、本書を初めて読んだことによる、ひとつの発見でした。

 それから発見といえば、山脇さんの絵にも、後期のそれとはまた違った雰囲気があって、とても新鮮に映りました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年12月10日
読了日 : 2023年12月10日
本棚登録日 : 2023年12月10日

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コメント 6件

111108さんのコメント
2023/12/10

たださん、こんばんは!

この前コメントに書かれてた「やってみたいこと」が、このクリスマス絵本特集でしょうか?そうだとしたらどこまで続くのか?楽しみです♪

「ぐりとぐら」もう本当に昔からの大好きなシリーズですが、本書がまさかビートルズやビーチボーイズと並べられようとは‥たださんの目の付け所に驚きです。山脇さんの絵と共に1966年の息吹を感じる作品なんですね。再読したくなりました♪

たださんのコメント
2023/12/10

111108さん、こんばんは!
コメントありがとうございます(^^)

はい、そうです♪
ありがとうございます(≧∀≦)
できるだけ、続けていきたいとは思っているのですが、ちょっと今、ネット予約がやりづらい時期の為、急に終了するかもしれません。取りあえず、今のところ、その8くらいまでは行けそうです(^^;

このシリーズは、もう一作目からオリジナリティがありますよね。それまでの日本の昔話的イメージの絵本とは異なる、教訓ものを前に出さない、純粋に楽しさを追求した作品だというのを、どこかの評論で読んだ記憶がありまして、今となっては、それにとても共感出来ますね。

それから、ビートルズとビーチボーイズ、畏れ入ります(^^;)
実はビートルズは、正直ちょっと苦手なのですが、それと彼らの音楽の素晴らしさは別だと思っていますし、実際に「リボルバー」は、彼らのアルバムの中でも評価が高いですよね。

また、ビーチボーイズの「ペットサウンズ」は、昔、CD持っていてよく聴いてました。それまで抱いていた、爽やかコーラスグループのイメージを覆した、シリアスで実験的ながらも維持された、美しいメロディは今も心に残っております。しかし、あのアルバムは、ブライアン・ウィルソン個人の作品とも言われているから、厳密には、って意見もありますが、でも間違いなく名盤だと思います。

「ぐりとぐら」から話が逸れてしまい、すみません。
そんな当時の日本に於いては、とても革新的な絵本だったのであろうといったイメージで書いたので、それで再読したいと思われたのなら、とても嬉しいですし、レビュー書いて良かったと思えました。
ありがとうございます(^^)

111108さんのコメント
2023/12/10

たださん、お返事ありがとうございます!

どこまで続くのかなぁと、楽しく見守らせてください♪

音楽のことは本当に素人過ぎて何もわかってなくて、でも何故かこのくらいの時代の音楽には心揺さぶられてました。どうして心地よく聴こえるのかとか、こういう風に演奏してたんだとか、今頃になって教えもらい理解して感動してるので、たださんのコメントもありがたいです。

ぐりとぐらもそういう風に革新的でありながら、純粋に楽しんで書かれてるのが伝わるのでしょうね♪

たださんのコメント
2023/12/11

111108さん

ありがとうございます!
出来るだけ続けていきたいと思います(^∇^)
理由あって、一冊以外、いつもの図書館のみのセレクトですが、それでもクリスマス絵本って、内容が本当に多岐に渡っていて、それだけ皆が読みたいテーマなのかもしれませんね♪

111108さんのコメント
2023/12/11

たださん

たださんのいつもの図書館、クリスマス絵本が充実してますね!
たくさん続くよう応援しまーす*\(^o^)/*

たださんのコメント
2023/12/11

111108さん

ありがとうございます!
特設コーナーを作った司書さんも、きっと喜んで下さると思います(*'▽'*)
それから、そこ以外の一冊も、お楽しみに(^_-)

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