世界を変えた10冊の本

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年2月10日発売)
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本棚登録 : 633
感想 : 55
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池上彰さんは社会情勢の複雑性を紐解くキュレーター。さすがに20年代に入ってお年を召されたなぁと思うところはあるが、彼の本が「入り口」として最適であることに変わりはない。

本書でピックアップされた10冊はどれも現代社会の主流派コンセプトの礎ばかり。
特に1冊目は良いチョイスと思った。アンネと同じ境遇を耐えて生き延びたヴィクトール・フランクの「夜と霧」でなく、ナチスを説いたハンナ・アーレントの「全体主義の起源」でもなく、「アンネの日記」であるのが良い。誰もが涙した「悲劇の少女」だったからこそ、多数派の共感を結集させてあらゆる「反ユダヤ思想」を「ナチス」色に染め上げることに成功したと言って良い。「ユダヤ陰謀論」も「反ユダヤ主義」も、今やナチス同様に「悪」にくくられる差別思想なのだ(土地を追われたパレスチナ人や資本主義で搾取される側の人たちが大勢居るにも関わらず、ユダヤ側をまとめて批判することはご法度とみなされる)。

この他、経済(資本主義)に関する書籍が多いのも特徴的だった。「プロテスタンティズムの倫理と資本」「資本論」「沈黙の春(資本主義の結果もたらされた環境問題の指摘なのでこれも入れる)」「雇用、利子および貨幣の一般理論」「資本主義と自由」が紹介されていた。最近では資本主義の自由競争の文脈でもイノベーションでも「進化論」が語られる(詳しくは「進化思考」の感想に書いた https://booklog.jp/users/kuwataka/archives/1/4909934006 )ので6/10は経済関連書と言えるかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年10月5日
読了日 : 2022年10月5日
本棚登録日 : 2022年6月30日

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