こまやかな情愛のこもった中に激しい想いが…。
散り椿
2021.08発行。字の大きさは…大活字。2022.05.25~06.04音読で読了。★★★★★
亡き妻・篠の情愛が、静かに、そして激しく夫・瓜生新兵衛を動かす物語です。
篠は、死に際して、私が死んだら夫はどうするだろうかと考えると、もしやして、夫は私が死んだら後を追って死ぬのではないかと。そこで一計を案じます。手元に持っていた祝言前に榊原采女から貰った三通の恋文を使って。
私が死んだら国元に帰って散り椿を見てほしいと、そして榊原采女を助けてほしいと願います。新兵衛は、篠に「この願いをかなえたら褒めてくれるか」と。篠は、「お褒めしますとも」と。
新兵衛は、篠の願いをかなえるために18年ぶりに国元に帰ります。そうすると、18年前に新兵衛が勘定方の不正を訴えたために国を出なければならなくなった事件が、再び蒸し返され、大きな御家騒動へと発展していきます。その中で四天王といわれた新兵衛の秘剣雷斬りが冴え渡ります。
【読後】
かつて二人で見た散り椿を見ながら新兵衛は、散る椿は、残る椿があるからこそ散って行けるのですと…篠のことを想います。新兵衛を心の底から愛する篠は、ただただ新兵衛に生きていて…ほしかったのです。
多くのページは、御家騒動に費やされながら、その中で新兵衛の揺れる心、篠への想いが感じられ、とても良く、大変心に残る作品でした。音読しながら時々涙がとめどなく流れて来るのを止めることが出来ませんでした。
「散り椿」。椿は、花がぽたりと落ちます。このため武士には首が落ちるとして嫌われますが。散り椿は、花弁が一片(ひとひら)ずつ散っていきます。
【音読】
2022年5月25日から6月4日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2014年12月に角川文庫から発行された「散り椿」です。本の登録は、角川文庫で行います。社会福祉法人埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
- 感想投稿日 : 2022年6月7日
- 読了日 : 2022年6月4日
- 本棚登録日 : 2022年5月24日
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