高家表裏譚1 跡継 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2020年3月24日発売)
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感想 : 8
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跡継 ― 高家表裏譚シリーズの1作目 
2020.03発行。字の大きさは…小。

赤穂浪士の討ち入りで有名な高家・吉良上野介義央(よしなか)の若き日の物語です。

鎌倉以来の名門吉良家当主の父・吉良左近衛少将義冬(よしふゆ)から厳しく学問と武術を学び、高家旗本四千石の跡継として成長して行く、吉良三郎(幼名)の成長の様を書いています。
三郎は、高家こそ、武士の鑑。武家を導く者であると、父・義冬から厳しく育てられます。高家の役目は、礼法を司ることであるが、礼は武と表裏の関係にあると。

そんななかで大名家、旗本の昇爵(しょうしゃく)の時期が来ます。昇爵の推薦を行うのも高家の重要な仕事です。此度は、萩三十万石毛利長門守綱広の昇爵を求めて、毛利家から吉良家をはじめ高家及び公家に音物(いんもつ)を送るが。
吉良義冬は、毛利家から送られて来た音物(賄賂)が加賀前田百万石と比べて少ないので、毛利長門守の昇爵を認めないと、高家寄合の場、老中との話し合いの場で、強引に持論を主張し毛利長門守の昇爵を朝廷に申し入れないこととする。

吉良義冬は、まことに、自分に入る賄賂の金高で物事を左右する、あさましい人間である。その教育を受けた三郎が、後に赤穂四十七士に打ち取られるのも判る筋書になっている。
三郎が、毛利家を訪れて次席家老に、毛利長門守の昇爵は朝廷に奏上しないと言ったことを聞いた毛利長門守は、三郎を殺そうとするが……。

【読後】
江戸時代、官位を金で買うことが、公然と行われていたことが読み取れます。ただ、その金について、受ける吉良義冬(貰って当たり前)と、払う毛利家の感覚が違ったことが悲劇を生みます。赤穂事件でも、浅野家の家老が、賄賂を出した金額が、吉良の思惑と合わず。このため吉良上野介から嫌がらせをされて……。
いまも変わらず、金々ですが、ほんと嫌な時代です。
上田秀人の本は、理屈ぽく、説明文が多いが。今回は特に、理屈をこねまわしている本です。

【豆知識】
「高家(こうけ)」は、江戸幕府における儀式や典礼を司る役職。また、この職に就くことのできる家格の旗本(高家旗本)を指す。役職としての高家を「高家職」と記すことがある。高家旗本のうち、高家職に就いている家は奥高家、非役の家は表高家と呼ばれた。←Wikipedia

「吉良義央(きら よしなか)」は、江戸時代前期の高家旗本(高家肝煎)。赤穂事件で浅野長矩により刃傷を受け、隠居後は赤穂浪士により邸内にいた小林央通、鳥居正次、清水義久らと共に討たれた。同事件に題材をとった創作作品『忠臣蔵』では敵役として描かれる場合が多い。幼名は三郎、通称は左近。従四位上・左近衛権少将、上野介(こうずけのすけ)。一般的には吉良上野介と呼ばれる。←Wikipedia

「昇爵(しょうしゃく)」、その意味は「爵位(しゃくい)を上にあげる」こと。←コトバンク
「毛利綱広(もうり つなひろ)」は、長州藩2代藩主。初代藩主・毛利秀就の四男。母喜佐姫が徳川家康の孫なので、綱広は家康の外曾孫に当たる。←Wikipedia
「音物(いんもつ)」は、贈り物。進物。賄賂 (わいろ) 。←goo辞書

【著者紹介】
「上田秀人(うえだ ひでと、1959年4月9日 - )」は、日本の小説家。大阪府出身。兼業作家であり、本業は歯科医である。←Wikipedia
2021.03.30読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2021年3月30日
読了日 : 2021年3月30日
本棚登録日 : 2021年3月6日

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