善人長屋 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2012年9月28日発売)
3.86
  • (43)
  • (105)
  • (48)
  • (6)
  • (4)
本棚登録 : 708
感想 : 62
4

心が温かくなっり、笑いが、自然と笑顔が出てきます。
善人長屋シリーズの1作目
2018.11発行。字の大きさは…大活字。2022.06.11~18音読で読了。★★★★☆
世を忍ぶ悪党の巣「善人長屋」に、三州赤坂宿の錠前破りの盗人が住むはずが、間違って江戸は赤坂御門の赤坂の錠前職人の加助が住み始めた。根っからの善人で人助けが生き甲斐の加助が面倒を持ち込むたびに、悪党たちは裏稼業の凄腕を生かして解決に導くのを面白おかしく書いた物語です。
善人長屋、泥棒簪、抜けずの刀、嘘つき紅、源平蛍、犀の子守歌、冬の蝉、夜叉坊主の代之助、野州屋の蔵、の超短編9話。

【善人長屋】
千七長屋(善人長屋)の大家で質屋の千鳥屋儀右衛門が世話になった三州の盗人の頭から、赤坂宿の錠前破りの盗人の世話を頼まれた。その時に赤坂の錠前職人の加助が来たので、長屋に住まわせたら加助は赤坂は赤坂でも江戸は赤坂御門の赤坂で、盗人でなく根っからの善人だった。この物語は、ここから始まります。小悪党ばかり住んでいる長屋に底抜けに明るい善人の加助がくり広げる笑いと泣の物語です。そんな中で長屋の盗人は、身元がばれないかひやひやしながら…。

【泥棒簪】
長屋の住人は、盗み、騙りなどの裏家業を隠すために、表向きは善人で表稼業を持っている。加助が、白昼堂々と簪を盗まれた娘を長屋に連れてきて。「この長屋の衆は、善人長屋の名に恥じねえ人たちばかりだ。きっと助けになってくれるよ」と…。

【抜けずの刀】
長屋で代書屋をやっている浪人の梶新九郎が、本所緑町の料理屋「桂井」の末娘、おみち殺しの疑いで番屋に連れていかれた…。

【嘘つき紅】
「紅一匁(もんめ)は金一匁」といわれる、紅を扱う相屋に騙された彦次を加助が長屋に連れて来る…。

【源平蛍】
鍛冶屋を表稼業とする源平は、裏家業の火事屋に返り咲き…。源平の火事は、人を殺さず、目的の家以外は一切焼かない見事なものです。

【犀の子守歌】
下野国にある一万五千石井筒藩刈田家の小姓であった三浦斎之介は、死に瀕死て旧主、刈田直矩(なおのり)に会いに行くが…。直矩は、体は男であるが心は、女であった。直矩は、斎之介を溺愛し、嫁を貰っても手放さなかった。

【冬の蝉】
朝晩の肌寒さがこたえる11月に、長屋の前に赤ん坊が捨てられていた。加助は大いに不憫がり、赤ん坊の世話を己で引き受けていた。

【夜叉坊主の代之助】
去年の二月、赤坂で起きた火事で妻と子を亡くした加助は、富岡八幡宮で妻のお多津を見かけた。お多津は、盗賊夜叉坊主の代之助一味の引き込みとして日本橋大伝馬町一丁目にある野州屋に女中として入っている。

【野州屋の蔵】
野州屋喜八朗の蔵は、誰にも開けられないと盗賊仲間に噂が広まっていた。夜叉坊主の代之助は、野州屋の蔵を開けて盗賊仲間の鼻を明かしたいと、お多津を女中として入れたが、どうしても開けることが出来ない。蔵にかかっている鍵は、最初から鍵でなかった。

【読後】
展開が早く、テンポもよく、加助のお節介がおかしくて、笑いが出てくるし、しんみりと涙も出てきます。超短編9話の中で、斎之介が、直矩を想い身を引くが。最後には一目会いたいと…の想いを書いた「犀の子守歌」がよかったです。

【音読】
2022年6月11日から6月18日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2012年10月に新潮文庫から発行された「善人長屋」です。本の登録は、新潮文庫で行います。社会福祉法人埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2022年6月24日
読了日 : 2022年6月24日
本棚登録日 : 2022年6月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする