あい

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2013年1月9日発売)
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こころがほんわかと……
厳しい中にも、夫を愛し支え続けた妻の物語です。

関寛斎は、幕末から明治時代を〈1830(文政13)年3月12日ー1912(大正元)年10月15日〉力強く生き抜き、次々と目的を追い求め、富を求めず、気高く、一本気で生き続けた蘭方医である。その関寛斎の妻あいの物語です。

寛斎は、あいの父・左衛門の兄・関俊輔の妻・年子の妹・幸子の子・豊太郎(寛斎の幼名)。その幸子の死後、子に恵まれなかったあいの叔父である関俊輔年子夫妻が甥である豊太郎を養子に迎える。あいと寛斎は、いとこ…?

上総国山辺郡前之内村(現在の千葉県東金市)の農家の子として生まれた君塚あいは、十八歳の時に同村の五歳上の関寛斎と祝言を挙げ八男四女の子をもうけたが。六人の子に先立たれ、残ったのは五男一女です。子に先立たれる母の悲しみが随所に出てきます。が、持ち前の明るさと物事を良い方向に考えるあいは、夫寛斎が岐路にさしかかると話しかけ、話を聞き前向きに助言します。

寛斎があいについて「あいの取柄は、苦労が骨の髄まで浸みてないことだね。闇の中に居てもそれと気づかない。いつも物事の明るい面だけを見ているのは、時折り羨ましくなる。ふた親から充分に情を受けて育った強みだよ」と言っています。

寛斎は、戊辰戦争で極めて人道的な活躍した経緯があり、また非常に几帳面で筆まめな性格であったため徳富蘆花や司馬遼太郎などが題材にされた実在の人物ですが。あいに関する資料が残っていません。このため妻あいについては、著者高田郁が初めて書いたものです。

【読後】
読みながら、こころがやわらかく蕩けていくような感じがしました。が、時代の激しい動きのなか、貧しい農家の出であるあいと、貧しい者から銭を貰わないで診療を行う寛斎は、まずしいですが。心は明るく、凛としています。読後感がよく、心が温かくなっています。

「購入」
あい《単行本》
2013.01発行。字の大きさは…中。
2023.10.25~27読了。★★★★★
ブックオフ、220円で購入2023.08.31

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2023年10月27日
読了日 : 2023年10月27日
本棚登録日 : 2023年8月31日

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