通訳者の柴原智幸氏のコメントを見て、興味を引かれて手に取った。
面白かった。いろんな意味で。
今、フィルムスタディーズやまんが論も文学研究の対象となってきてるけど、この本を読んで「やっぱりなー」と思った。
映画の手法を学んで、映画を文学のように「読んで」分析するのももちろん意義あることだと思うけれど、実際に映画を制作してみないと分からない事は沢山あるんじゃないかなって、ずっと思ってた。映画論の場合は着目点によっては新しい視座を開いてくれるものではあるけれど、そういうものを書くのはやっぱり思想的に鋭くて、碩学な方なんだよねー。
著者の大学では、学生は実際に物語をまんがに「翻訳」(呼び方はどうでもいい、と著者は付け加えている。こういうの、大好きだ)したり、まんが科専攻学生が、漫画を映画に「翻訳」することを課せられているというのも面白かった。
ある枠組みのものを違う枠組みで表現するには、どうしても欠如するもの、削除するもの、付加しなければならないもの、置き換えなければならないもの等等が出てくることを、頭だけでなく身体で体験できる学生はしあわせだ。
多分、著者の方法論にそって履修(といっても、ほとんど研修と呼んでいいくらいだと思う)した学生達は、著者が言うように卒業の頃には大多数がプロとしてのスタート地点レベルの漫画が描けるようになるんだと思う。
でも、彼らのホントの試練はその後だろうなー。これは私自身あるスキルをある程度身につけて、その現場で10年ほど仕事して感じたことだけど。現場で通用する技術を達成し、ある程度の仕事をこなすようになった後、センスとか感性という問題が首をもたげてくる。クリエイターよりもその指導者になる方が適する人も出てくるだろう。
著者が教鞭をとる大学で学び巣立った学生が、今も健闘しているといいなー。
- 感想投稿日 : 2013年6月15日
- 読了日 : 2013年6月15日
- 本棚登録日 : 2013年6月15日
みんなの感想をみる