わらの女 (創元推理文庫 M ア 5-1)

  • 東京創元社 (1964年8月1日発売)
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感想 : 13
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第二次大戦中のドイツ、ハンブルグの爆撃により家も家族も財産も全て失われたヒルデガルデ・マエナーは億万長者が妻を求める新聞広告を目にする。広告の内容は独特なものであったが、長年求めてきた財産のため、これに応募した。

最初に会ったのは億万長者の秘書のアントン・コルフで、自分が指導して高齢で気難しい億万長者であるカール・リッチモンド好みの女に仕立てあげる。ヒルデガルデはカールと結婚し、彼の死後その財産を相続する、アントン・コルフは現在の遺書から受け取れる10倍の20万ドルを受け取ると言う条件で計画を立てる。

計画通りカールはヒルデガルデを気に入り結婚に至る。しかし、結婚してすぐにカールは死亡してしまう。アントン・コルフはヒルデガルデにすべての財産を残すという遺書を有効にさせるためカールの死を数日秘匿するよう指示する。船から死体を車いすに乗せ自宅まで移動するが、不審を感じた運転手により警察にカールの死が発見されてしまう。

ここでもヒルデガルデはアントン・コルフの指示に従って真相を隠すが、これが元で殺人の容疑で逮捕される。ここですべての真相がアントン・コルフから明かされる。カールを殺したのはアントン・コルフでその罪をヒルデガルデに着せる。アントン・コルフはヒルデガルデを養子にしたためカールの財産がすべてアントン・コルフに渡る。新しい遺書があるというのも嘘で怪しい行動を取らせるための罠だった。

アントン・コルフの仕掛けた計画は成功し、彼による完全犯罪が達成される。ヒルデガルデはその欲望をさらに大きな欲望の持ち主であるアントン・コルフに利用される。無実の罪を着せられ死刑判決を受けたヒルデガルデは絶望し獄中で自殺する。

アントン・コルフほどの悪人は初めてで、他の小説の犯人よりも際立っている。最後にどんでん返しがあるのかと思うとそのまま物語が終わってしまう。悪は見逃され、欲望の持ち主は滅びる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 1950年代
感想投稿日 : 2016年1月31日
読了日 : 2016年1月14日
本棚登録日 : 2016年1月12日

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