“「眠れないの?」
タカシは枕を脇に抱えて頷いた。
ユナにききたい。お父さんとお母さんは、本当に今生きているのか。あの手紙は本物なのか。でも、夢の中で棺桶を開くことができなかったのと同じく、返答が怖くて言葉が出ない。ただ涙が零れる。
「どうした」ユナはやさしくいった。
「嫌な夢を見た」
「だから泣いているの?大丈夫よ」ユナはハンモックから下りた。「心配したって仕方がない」
「夜が怖い」
「困ったわね。じゃあ、ちょっと散歩でもしようか」”
ファンタジーチックで、少し怖い。
恐怖というよりは、奇妙な得体の知れなさ。
今の自分のすぐそこにも転がっていそうな。
“月に照らされた灰色の雲が夜空を流れている。
私は自分の頭の中の輝く場所へ意識を集中して、聖域に入った。
紫焰樹のそばにくるとしばらく放心した。
トイトイ様が私の横に現れた。
「みんな大嫌い」
私はいってみた。
でも、いってみただけで、本当は誰も嫌いではなかった。
トイトイ様は慰めるようにいった。
「時折、寂しくて、寂しくて、仕方がなくなるだろう?」
私は答えなかった。
「みんな同じだ」
トイトイ様は長い手を伸ばして私の頭を撫でると、森の中へと消えていった。”
読書状況:読み終わった
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本
- 感想投稿日 : 2011年2月11日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年2月11日
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