表題作他、「にごりえ」「十三夜」も収録。時代的には古典ではないが古文のように一文が長いので慎重に読んだ。どの話も細かい注釈がすぐ下部分に書いてあり、話の流れを切らずに参照できる工夫がしてある。
「たけくらべ」では男勝りの女の子、美登利が主人公。この子供たちをとりまく環境の描写の鮮やかさ。そして、美登利が信如に抱く恋愛感情の描写が鮮やかで切ない。この時代に少女漫画があったらこんな感じだろうか。信如に対する描写もよいが、初潮を迎えて複雑な心境となる美登利に対する正太の声掛けの描写が実に印象的。美登利が好きだからこそ力になりたい正太と、そういう問題じゃないから今はかかわらないでくれという美登利のすれ違いを描いたものは今でも十分共感を得るのでは。
「にごりえ」はなんとも後味が悪い最後だが、これが一番きれいな収まり方のような気もする。だがお初が不憫。
「十三夜」はある意味綺麗な話。一夜だけ語り合って別れ行く中できっと主人公は子の母として生きていく決意も深まったのかもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
心情描写
- 感想投稿日 : 2018年2月12日
- 読了日 : 2018年2月12日
- 本棚登録日 : 2018年2月12日
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