狼たちの月

  • ヴィレッジブックス (2007年12月15日発売)
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5

ヒースの茂み。
川の瀬音が止む瞬間。
家畜小屋の干し草。
洞窟。
闇。
焚き火の黒い煙。
みみずくの鳴く声。
軽機関銃。
夜の草原。
牝牛。
深い穴ぐら。あるいは谷底。
重い沈黙。
差し込む光が突き刺す潰れた五感。
吹雪。
雨。雨音。
ブナ林。
教会の鐘の音。
窒息感。
土地への執着。
絶望。
息遣い。
そして、孤独。

9年間の生死を賭けた凄惨な逃亡生活が、血なまぐさいスペイン内戦の現実が、まるで何か静謐で透明な情景を描くかのように語られています。冬の朝の、あの凛と張り詰めた空気のように。
読んでいる間、ずっと頭から離れないのは、月の浮かぶ静かな夜の森を孤独にさまよう狼たちの姿。
作品全体を漂うこうした雰囲気は、著者と翻訳者の言葉の表現力に大きく依るのでしょうね。

「狼たち」の行く末に引き込まれ、その描かれる情景に「浸る」作品。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 書籍(フィクション)
感想投稿日 : 2008年10月29日
本棚登録日 : 2008年10月29日

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