タイトルからアフリカのどっしりとした女たちの姿を想像するが、登場するのは脆く繊細な女たちと男。
フランス人の母とアフリカ人の強権的な父の間にフランスに生まれ、苦学して身を立てたが父に請われてアフリカにあるその家を訪ねるノラ、幼い頃アフリカに移住し、成人したものの、ある事件をきっかけにフランスに舞い戻った男、ルディ、そして身一つで必死にヨーロッパへの亡命を試みる貧しいカディ。
三人の「女」? おそらく、ルディがフランスに連れ帰ったアフリカ人の妻のことか。
先に書いたように、この二人の女と男、「逞しい」どころか、自らをも信頼できずに危うい精神状態にあり、だれかにひょいと背中を突かれたらそのままどこかに転がり落ちそうな人たちである。しかしその奥底に熾火のように消しきれぬ愛があり、生きることへの執着がある。目を覆い耳を塞ぎたくなるような話もあるが、描かれるのは絶望ばかりではない。特に第2話の終わりは、まるで自分が見たかのように映像がありありと残る。
三作はゆるく繋がる連作とも読め、どの章においても鳥たちの存在が目を引く作り。
とにかく訳文が素晴らしい。このリズムと迫力と美しさ、おそらく一筋縄ではいかなかったろうと思わせはするが、その苦労を滲み出させることはない。長い詩を読むかのようだった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2019年6月29日
- 読了日 : 2019年6月29日
- 本棚登録日 : 2019年6月29日
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