志賀高原でマイナス20度のなか、ハラスが失踪してしまった事件の描写に胸が締めつけられる。
ハラスが冬山に飛び出して行ってしまった理由を作者が推測して書いているのだが、そこには『ハラスの行動を冷静に分析している、愛情の眼差しをもった飼い主の姿』が浮かび上がってくるからだ。
言葉は通じないけれど、犬とたしかに気持ちが伝わっているな、と思う瞬間は犬と暮らしている者にとってはとても身近なものだと思う。その、以心伝心の瞬間を楽しく心温まるシーンだけでなく、ハラスが雪原に飛び出していったまま行方がわからなくなってしまったという悔恨と焦りと緊張のシーンでも、我がことのように追体験してしまい、涙が止まらなかった。
犬と人間の不変の愛とつながりを描く本作は、犬を飼ったことのある人にとっての『(飼い犬)のいた日々』であり、いつの時代でも人の心を動かす作品なのだろうと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文芸書(日本)
- 感想投稿日 : 2019年3月28日
- 読了日 : 2019年3月27日
- 本棚登録日 : 2019年3月28日
みんなの感想をみる