書評や、雑誌の紹介で名前を見かけることが多かったので読んでみた。ちょっと先の東京の未来を描いたもの。いま、現在進行形で動いてることから地続きにありそうで、その中で高揚感を感じさせるような、フィクションならではの空気感は良かった。
主人公に備わった、パルクールの身体能力というチョイスも、この近未来感を手伝った。身体の動き、そのまわりの情景を事細かに描いててすごい、と思った。
が、読む側の私がその描写を脳内で再構成する力がなかった…ので、あまりこのスピード感、アクロバティックさを味わうことができず残念。普段から体を動かしたり、空間把握能力に長けてる人には向いてるのかも。
肝心のストーリーは、想定してたよりも明るかった。と、同時に、目の前で起こってることに必然性や重みがあまり感じにくい話だなと思った。ちょっと物足りなかった。
主人公の出生の話や、アイデンティティの話がはじめに際立つので、その「逃れられない運命」と比べてしまった。物語の軸が、学校や、雇用といった枠組みの問題なので、やや他愛もないものに見えてしまったかなぁ…
バイオレンスなものがなかったので、穏やかに読めたのはよかった。身体的に強い登場人物が、暴力ではない別の新しい力で、物語の方向性を変えていくという流れを観れたので、そういう作品に出会えたことは感謝。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年5月5日
- 読了日 : 2019年5月5日
- 本棚登録日 : 2019年3月30日
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