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内容(「BOOK」データベースより)
『殺、掠、姦―一九三七年、南京を占領した日本軍は暴虐のかぎりを尽した。破壊された家屋、横行する掠奪と凌辱、積み重なる屍体の山。この人倫の崩壊した時間のなかで人は何を考え、何をなすことができるのか。南京事件を中国人知識人の視点から手記のかたちで語り、歴史と人間存在の本質を問うた戦後文学の金字塔。』
冒頭
『一九三七年十一月三十日
兄を下関の海軍碼頭までおくりにいって来た。
甲板の上にまで溢れ出た多数の船客のなかには、兄のつとめ先である司法部の役人とその家族が多勢まじっていた。政府の移転する漢口へと落ちてゆくこれらの人々の顔は、いずれもみな埃にまみれ、平生は法服に威儀を正し、司法官としての威厳を保つことに心を砕き、人を死刑にする時にもとりみだしたりはしない筈なのに、今日は、鼻の両脇に黒いものをためて平然としている。』
『時間』
著者:堀田 善衛(ほった よしえ)
出版社 : 岩波書店
文庫 : 288ページ
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年10月29日
- 読了日 : 2022年1月25日
- 本棚登録日 : 2021年10月29日
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