時間 (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2015年11月18日発売)
3.96
  • (9)
  • (8)
  • (6)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 155
感想 : 13
5

4/107
内容(「BOOK」データベースより)
『殺、掠、姦―一九三七年、南京を占領した日本軍は暴虐のかぎりを尽した。破壊された家屋、横行する掠奪と凌辱、積み重なる屍体の山。この人倫の崩壊した時間のなかで人は何を考え、何をなすことができるのか。南京事件を中国人知識人の視点から手記のかたちで語り、歴史と人間存在の本質を問うた戦後文学の金字塔。』


冒頭
『一九三七年十一月三十日
兄を下関の海軍碼頭までおくりにいって来た。
甲板の上にまで溢れ出た多数の船客のなかには、兄のつとめ先である司法部の役人とその家族が多勢まじっていた。政府の移転する漢口へと落ちてゆくこれらの人々の顔は、いずれもみな埃にまみれ、平生は法服に威儀を正し、司法官としての威厳を保つことに心を砕き、人を死刑にする時にもとりみだしたりはしない筈なのに、今日は、鼻の両脇に黒いものをためて平然としている。』


『時間』
著者:堀田 善衛(ほった よしえ)
出版社 ‏: ‎岩波書店
文庫 ‏: ‎288ページ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月29日
読了日 : 2022年1月25日
本棚登録日 : 2021年10月29日

みんなの感想をみる

ツイートする