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内容(「BOOK」データベースより)
『父の通夜にきた女の、喪服からのぞいた襦袢の襟の色(「桃色」)。女が出て行ったあと、卓袱台のうえに残された腐りかけた桃の匂い(「桃―お葉の匂い」)。濃密で甘く官能的な果実をモチーフに、紡ぎ出される八つの短篇。』
目次
桃色/むらさきの/囁きの猫/尼港の桃/同行二人/いけない指/響きあう子ら/桃-お葉の匂い
桃色
(冒頭)
『父の通夜は、町外れの小さな寺で行なわれた。九月はじめの六時といえば、まだ日が残っていて、境内の桧の繁みでは昼蝉がうるさく鳴いていた。父はさほど人づきあいが多い方ではなかったので、会葬者も少なく、住職のお経がはじめって十五分もすると、喪服の客たちの大半は焼香を終えて、国道へつづく草の径を二、三人ずつ固まって帰っていく。』
『桃』
著者:久世 光彦(くぜ てるひこ)
出版社 : 中央公論新社
文庫 : 229ページ
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
短篇
- 感想投稿日 : 2021年10月19日
- 読了日 : 2021年10月19日
- 本棚登録日 : 2021年10月19日
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