ウェディング・ドレス (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年2月15日発売)
3.19
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本棚登録 : 459
感想 : 70
4

初読みの作家さん、ブクログでフォロワーさんの評価が高く興味を持った。今作が処女作でメフィスト賞を受賞している。以下ネタバレになりますのでご注意ください。







序盤から人称変化による叙述トリックの匂いがプンプンしている。恋人同士の男女がそれぞれ交互に出来事を紡いでいくのだが、二人の行動、出来事に微妙な差異があり、事件勃発時には全く異なる事象が展開される。このへんで時系列誤認のトリックが想起される。この展開は過去の読書歴からして驚くことではなく、どのように騙してくれるのか?そう簡単には…などと余裕もあったりしたのだが…


中盤以降二人が離れ離れとなっていくにつれ、事象に関わる人物が多く登場するのと、二人に起こった事件があまりにも違い過ぎる故、これは作中作のあるメタ構造では?とも思えた。これは大きな勘違いであったが…さらに殺人事件における密室まで登場してしまい、これは収集つくのか?どうやってまとめるのだ?と疑問に思うのだが、離れていた二人が再開することによって、かつてなかったほどの大量のパズルピースが、すべてハマり二重三重のどんでん返しが展開される。よくぞこれをまとめあげたな!という読後感を得た。これは物語の出来云々ではなく、作者の努力を称えたいという種類のものである。


詰め込み過ぎなカンジもする、強引さもあったかもしれない。ただ時系列や人称変化によるトリックはすでに20~30年も前に折原一、中町信らによって描かれているではないか!これだけではダメじゃないか。もっともっとやってやろう、という黒田氏の気概を大いにに感じたのだ。個人的に特筆事項は、密室殺人に物理的仕掛けまで取り入れてきたことだ。一歩間違えばバカミスになりかねなく、実際どうなの?と突っ込まれかねないが、それを押し込んでまとめ上げた努力を大いに称えたいと思う。

好き嫌いの分かれる作風だし作家さんだと思う、が自分は大いに気に入った。他の作品も読んでみようと思う。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: その他国内
感想投稿日 : 2014年5月12日
本棚登録日 : 2014年5月7日

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