良いですねー。社会科学的な観点も含めて、本寸法のハードSFですね。
「環境による意識の変容」を共通のテーマとした4篇を収録。といってもそれぞれの作品に繋がりはなく、テイストも様々で、同じ素材を様々な手法で調理したコース料理を味わった感覚です。なかなか贅沢。
あまりSFを読み慣れていない人が「SF」と聞いて想起するイメージをそのまま作品にしたような、無駄なく引き締まった端正なハードSF揃い。冒頭の「ギャルナフカの迷宮」はSFの「S」風味薄めですが、社会科学系SFと言えますし、普段SFを読まない人にもお勧めできる、文句なしの傑作。
明るい結末の話ばかり、ではありません。暗い未来が待ち受けている不穏な雰囲気を漂わせたまま幕を閉じる作品もあります。それでも、登場人物たちが(時には悲壮な決意混じりながらも)共に協力し合い、前向きな勇気を持ち続けていることが、爽やかな読後感を残します。ちょっと理想的過ぎやしないか、と思うところも、正直ありますけどね(^_^; SFだもん、これぐらいキレイでも良いじゃないか!
小川一水氏の作品は、これまでアンソロジー収録の短編をいくつか読んだことがあるのですが、実はその「理想的過ぎる」ところが少々鼻についてしまい、あまり楽しめなかったのでした。この作品集に納められている短編群は、バランス感覚が絶妙で鴨的にもとても楽しく読むことができました。他の作品も、機会があればチャレンジしてみたいと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF(日本・短編)
- 感想投稿日 : 2022年11月2日
- 読了日 : 2022年10月15日
- 本棚登録日 : 2021年12月5日
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