阪急電車 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2010年8月5日発売)
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本棚登録 : 52857
感想 : 5187
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 阪急電車には馴染みがあるので、ブックオフで見つけ、積んでおいた本だが、ブクログのブックリストのテーマ「キュンな本」で一番有川浩さんの本が多く上がっていたようなので、春も来たことだし、ひとつ「キュン」としてみたくて。
 阪急には良く乗っているが、私は全く乗ったことのない路線。改めて阪急の路線図を見ると、とても広い範囲。
 まず、土曜日の昼下がりという設定がいい。平凡で平和な日、図書館でいつも同じ本を争奪戦している、可愛い彼女と偶然?同じ車両の隣同士の席に乗り合わせた彼。会話の発端は窓から見えた川の中のアート。
 純白のドレスを着て結婚式の来賓の引き出物を持っているという、訳ありげな美女。その彼女に「討ち入りは成功したの?」と声をかける理性的な年配の女性。その彼女に年配の女性は「良かったら次の“小林“という駅で降りて休んで行きなさい。いい駅だから」と勧めた。何の変哲も無さそうなのに駅に来るツバメについて「今年もやってきました。皆さんで暖かく見守ってください」と駅員さんからのメッセージが添えられていたり、なんとなく暖かさの感じられる“小林“という町で、純白ドレスの彼女は歩いているだけで、心が再生し、婚約者を寝取られたことなんてどうでも良くなった。
 色々な人間模様がある。彼女に乱暴な口を利き、暴力的で威圧的な彼氏とズルズル付き合っていた彼女にも、その理性的な年配の女性は「くだらない男ね」と一言言ってくれたおかげで、別れる決心がついた。
 電車の中で、大声で話す派手な中年婦人のグループから抜けたい女性。
 小学生のグループからハミゴにされている女の子。
 馬鹿だが優しい社会人の男性と付き合っている女子高生。
 都会的な駅、寂れた駅、それぞれの駅にドラマがあり、駅だけでは分からない町のドラマがあり…。
 ここに書ききれないが、平凡な電車の中の平凡な人々の「キュン」や「闘い」があって、電車の中で偶然出会った人とのほんの10分、15分の会話がその後の人生の方向を大きく変えるというのが、どこにでもありそうで無いのがニクイところで。
 何が言いたいかというと、私も明日から平凡な平日で仕事なので、もう寝たいから締めるけれど、傷ついている若い女性にピシッと短いけれど暖かいひとことを言ってあげた、あの素敵な年配女性のように私もなりたいと思いました。
 とりあえず、阪急沿線には住んでいるので、今度日帰り阪急旅をして、宝塚中央図書館を見てきたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月4日
読了日 : 2024年3月4日
本棚登録日 : 2024年3月4日

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コメント 2件

hirokingさんのコメント
2024/03/06

Macomi55さん

お久しぶりです。
有川さんの「阪急電車」、良いですよね。以前お話しさせていただいたと思いますが、私は阪急電車の主要路線を利用しながら成長してきました。高校時代は宝塚線。予備校時代は京都線。大学時代は神戸線。そして、現在は母が今津線沿線の町に住んでいます。もう20年以上になりますかね。
今のところ年2回程度母のところに帰っています。今津線にある「宝塚」-「西宮北口」間のほとんどの駅の周りは歩き回ったことがあります(短い路線ですから)。その下知識があった上で有川さんの描写を読むとかなりマッチしているんですよ。記憶の中の風景が呼び覚まされます。おそらくこの本が書かれた頃と今の風景はそれほど変わっていないように思います。
今でも母のところへ行くと、早朝に武庫川沿いの道に出て、河原を宝塚の方まで歩いて橋を渡り、(大通りを通らずに上手く住宅街を抜けながら)宝塚の方へ出て行くウォーキングルートがとても好きです。 ぜひ小旅行してみてください。

Macomi55さんのコメント
2024/03/06

コメントありがとうございます。
ヒロキンさんは、海外を含めて色んなところで生活されていたようですね。羨ましいです。
私は阪急は利用していると言ってもその多くは京都の街中の地下の部分です。
あと長岡天神あたりとか、梅田に行く時とかですね。梅田に行くにはJRよりかなり安いし、帰りは座れるし良いですね。
改めて見ると阪急電車ってそんなに沢山路線があったのですね。小説の中の沿線ももちろん乗ったことないのですが、見たことのある気がする光景が書かれていて親しみを覚えました。
ちょっと足を伸ばせばまだまだ行きたい所がありすぎて、ますます私はこの地から離れ無さそうです^ ^

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