阪急電車 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
4.20
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  • (92)
本棚登録 : 48332
感想 : 4905
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415133

作品紹介・あらすじ

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車-人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 阪急電鉄今津線を舞台に、往路で登場する人たちの出会い、恋模様、人間模様、そして復路ではその人物たちのその後の成長、生き方や心情の変化が描かれた連作短編。

    有川浩初読のレインツリーの国が読み心地良かったので、ずっと表題名が気になり積読していた本作を連読。

    本作も恋愛小説の類に入るのだろうか。
    そうであれば、おじさんの私はまだまだ恋愛小説でキュンキュンすることが判明した。
    フォロー・フォロワーの皆さま、こんな私をご許容願いたい。

    本作も心地の良い読了感を与えてくれた。

    それぞれの目的があって同じ電車に乗車している人たち。

    はじまりは他人同士、見ず知らずの人と人とが、ささやかなキッカケで出会い、影響され、ある者は恋に落ち、ある者は前向きな人生観を持ち…と、とてもホッコリする作品だった。

    私の実家の最寄路線が阪急電鉄京都本線だったことも、親近感を持って読み進められた大きな要因のひとつだったと言えよう。阪急茨木駅。最後に乗車したのは、かれこれ20年ほど前。駅もその周辺も、きっと大きく様変わりしていることだろう。

    本作を通じて、日常で乗る電車が少しだけ好きになった。

    そしてまた1人、好きな著者が増えた。

  • んんん~凄く面白かった
    同じ電車に乗る 乗客達
    それぞれが全く違う生き方なのに、皆少しだけ繋がっていて…各乗客のエピソードも、ホッコリしたり、スッキリしたり…
    でもコロナ渦では、この感じでは生活できないですね
    読んでて【コロナ渦になる前の日常を少し忘れてるな…どんなだったっけ…】と考えてしまった…

    でもコロナ渦以前の感覚も少し思い出させてくれた
    いい本でした

  • 電車に二人で乗っている時は、大抵緊張してそわそわしていた。視線はひたすら車内、乗客の中に知った顔がないかキョロキョロと視線をさまよわせていたものだった。その日、さてさて がXX駅から隣り合わせて座った女性は、さてさて からも女性の側からももちろんよく知った顔だった。○○線から△△線に乗り換えて一駅のYY駅に、今日夕食を食べる予定の場所がある。勤め人となって五年目の さてさて が久しぶりに赴くレストランだ。社内結婚だった さてさて は、妻と付き合っていることが同僚にばれることを極端に恐れ、ターミナル駅のデートを避け、各駅停車の停まる駅を選び、さらに同じ駅だと怪しまれると考えて、△△線の中で毎回会う駅を変えるということを繰り返していたのだった。三年後に結ばれた二人。でも、そんな二人の△△線を舞台にした物語を他の乗客は知る由もなかった。電車の中にいる人の数だけ物語はある。乗客たちがどんな物語を抱えているか ー それは乗客たちそれぞれしか知らない。

    『その日、征志が宝塚駅から隣り合わせて座った女性は、征志の側から一方的に見覚えのある人だった』。ほぼ二週間に一度のペースで通う宝塚中央図書館。新刊を先に手に取るのを争うライバルだと征志が一方的に意識していた女性が隣に座ります。窓の外に見えた『生』という字のオブジェを見たことをきっかけに偶然にも二人の間に会話が生まれ、実は彼女も征志を意識していたことを知ります。駅に着き『この次会ったとき、一緒に呑みましょうよ。缶じゃなくてジョッキで』と征志に語り電車を後にする女性。『ジョッキでいくなら 今日やろ!』と慌てて征志はあとを追いかけるのでした。一方、そんな二人の会話をぼんやりと聞いていた翔子は『ウェディングドレスもかくやという白いドレス』を着て扉の近くに立っていました。最初は二人のことをカップルだと思っていた翔子。電車を飛び出し、彼女を追う彼の姿を見て『いいもの見ちゃった。恋の始まるタイミングなんて』と小さく呟くのでした。そんな彼女は『討ち入り』の帰り。そして、…と、たまたまその電車に乗り合わせただけの同じ車内の乗客を、主人公視点に順番に切り替えてリレーのように繋いで物語は展開していきます。

    この作品は『阪急電車各線の中でも全国的知名度が低い』という今津線の8つの駅、所要15分を結ぶ車内を舞台に、たまたまその電車に乗り合わせたごく普通の人々のごく普通の日常の一場面を切り取って繋いでゆく作品です。何か大きなことが起こるわけではありません。ごく普通の人々が電車に乗り、シートに座って、駅に着き、そして降りていく。我々の誰しもが日常目にし、そして誰しもが取る光景と何ら変わりはありません。『ありとあらゆる身分、ありとあらゆる組み合わせの人々』がたまたま同じ時間、同じ空間を共にする偶然。思えば電車を利用するということは凄いことだと思います。『その一人一人がどんな思いを持っているか』。電車を利用している人はたまたま同じ時間、同じ空間を共にしているだけであって、それぞれの人生や思いをそれぞれが背負っていることなど意識していません。そして、電車を降りた後はまたそれぞれの人生の行くべき場所へと向かっていきます。そんな束の間の偶然の出会いの中で、はからずも他の乗客と思わぬ形でコミュニケーションを交わす時があります。一番多いのは席を譲る場面でしょうか。始発駅なら席取り合戦の場面でも何かしら人を意識する瞬間が生まれるかもしれません。そして、そんな中でほんのちょっとした会話が、ほんのちょっとした行為が、その相手の人生をも変えていくことがあります。でもそれぞれの人々は元々は知り合いでもなんでもないあかの他人です。この作品では、そんな他人と他人がたまたま同じ時間、同じ空間を共にしただけにも関わらず、不思議と知り合いにも見せてしまうところが絶妙です。そんな場面では、ある人が主人公として光を浴びていたのが、電車を降りて次の主人公にバトンが渡ると、電車を降りた人が途端に他人に思えてしまう不思議感。電車の乗客に絶対的な主人公など存在しないからこそ生まれるとても興味深い感覚です。この作品を読むことで、普段無意識に利用している電車というものがなんだかとても不思議な空間にも感じてきました。

    そして、作品は、終点の宝塚駅への結末に向かって全ての伏線が鮮やかなまでに回収されていきます。その一方で、電車から見る景色がそうであるように、回収された伏線はそれぞれの主人公の物語とともに後ろへと、もう違う世界へと遠ざかっていきます。『人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく』。物語は宝塚駅を出た各駅停車が西宮北口駅に到着し、折り返します。行きの電車にも様々なドラマがありました。そして宝塚駅へと折り返す電車の中には、結末へと向かうその先のドラマがありました。電車が進み、ひと駅、ひと駅と終点の宝塚駅が近づくに連れ、ゆっくり走って欲しい、まだ到着しないで欲しい、もっと車内に息づく物語を見ていたい、そう強く感じました。

    ほっこりとした幸せを感じた後に、しっとりとした余韻も感じさせてくれた作品。リズム感のある関西弁の響きとともに、作品全体から滲み出てくる沿線風景の味わいと、そこに暮らす人々の人としての魅力も存分に堪能させていただきました。
    いいなあ、この世界観。素敵な作品に出会えました。

  • 電車の中でたまたま隣り合った人たち。
    そのたまたまの出逢いから友だちになったり恋人になったり。
    隣から聞こえてくる会話から元気をもらったり、迷っている背中を押してもらえたり。
    目の前の名前も知らない、おそらく傷ついているであろう人に言葉をかけてあげたり。でも深入りせず「正しい行きずりの関係」で。

    「考えてみたらあたし、けっこう知らん人たちに救われてんねんなぁ」

    小学生からおばあちゃんまで色んな年代の女性たちが、たまたまの出逢いから影響を受け合って強くなっていく、とても素敵な作品でした。

    いやーしかし、関西弁のせいか、基本的にずーっと面白く読めて、読み終わるまでニヤニヤが止まりませんでした。ホント、最高に面白い本だった!

  • 人が少しだけ他人のことを想えると、
    素敵なことが沢山おきますね。

    人のためを想い、相手の感情や
    心情を感じてあげられる優しさが巡って、
    少しの幸せを配っていく。

    とても良い本でした。

  • 再読。
    有川さんが好きになったきっかけの本です。
    やっぱり面白い。
    テンポの良い文章で描かれる人間模様は絶品。
    たまたま同じ電車に乗り合わせた人たち。
    みんなそれぞれの人生を生きていて、関わることのない人たち。
    それが電車という空間で、さらっと関わる。
    中には、さらっとではない出会いもあるが。
    登場人物たちの年代は幅広く、いかにも電車という空間らしい。
    そして女性たちが、なんともカッコ良いのです。
    スカッと気持ちいい。
    興味深いのは、小学校一、二年の女の子たちの話。
    「こんな年でも少女たちはもう女だった。卑しく、優柔不断で、また誇り高い。あんな幼い、小さなコミュニティの中に、既に様々な女がいた」
    本当にその通り、ズバリとした表現だと思う。

    私は関東在住なので、今津線知らないんですが、いつか行きたい場所リスト入りです。

  • 連作短編集。面白かったの一言。
    作者の本をいくつか読んで好きになった理由がこの本を読んでみて分かったような気がする。
    失敗したやらかしてしまった人にも優しいからだと。そしてその人達に、素敵な出会いと進むべき道を見つけてくれる。
    この本は日常生活で自分の事だけで大変になっていて周りの人達も同様である事、今が大変でも過去の楽しかった時、大変な事を乗り越えてきた事を思い出させてくれる。今の自分が何故この生活を選んだかも。
    解説の児玉清さんもとても良い。どれだけ作者の事が好きなのかが伝わってくる。

    • yhyby940さん
      はい。登場する大学は母校です。それも楽しかったんですよね。
      はい。登場する大学は母校です。それも楽しかったんですよね。
      2022/10/16
    • 四季子さん
      この本の世界観好きなんです。そこで大学生活を送られたんですね。大好きな本の話を出来てとても嬉しいです。ありがとうございます。
      この本の世界観好きなんです。そこで大学生活を送られたんですね。大好きな本の話を出来てとても嬉しいです。ありがとうございます。
      2022/10/16
    • yhyby940さん
      こちらこそ。
      こちらこそ。
      2022/10/16
  •  有川浩さんの作品は初めて読みました。ブクログのレビューで見ると、ほのぼのした恋愛小説のようで、皆さん評価が高かったこの本から読み始めました。
     作品の構成は阪急線のとある区間について各駅ごとに行きかえりするのですが、それぞれの駅がひとつの章になっています。行って帰るってのがまた良くできていて、行きでそれぞれの話しが始まって、展開して帰りに同じ駅でその顛末がわかる、という。ストーリーはいくつか入っているのですが、それが阪急線の中で交差していきます。
     読み始めてすぐの感想は、キュンキュンする感じでしょうか。かわいらしい、恋の始まりがいくつか入っていて、おじさんの私からすると、「若いっていいね~」。あとは、登場するみんなが、知らない人に、しかも電車で一緒になっただけの人に良く話しかけること。しかも相手も普通に応答するんですね。関西だからでしょうか。東京でこんなにあったかいことって起こるのかしら??
     しかも、意気投合してそのあと飲みに行ったり、お茶しにいくってすごい!それだけ、特別なことが起こったんでしょうね。しかも、みんな「いい人」。いきなり、電車で一緒になっただけの人に話しかけたら、おかしな感じになりますが、ここで出てくる人たちは「ちゃんと」したタイミングで「ちゃんと」相手や周囲の状況も考えて「ちゃんと」した言葉で相手に伝えます。それに対して、相手も「ちゃんと」した言葉で応対するので、ずーっといい関係が続いていって、嫌な感じが少しもしないんですね。癒されました。

  • とても軽快で、楽しく読ませてもらいました。おじさんが書く言葉じゃないけど、まさに「胸キュン」でした。
    くくっちやいけないのかもですが「関西ならでは」感が、良い感じで沁みました。言葉なのかなぁ?

    出張で初めて阪急電車をみた時のインパクトは今も忘れてなかったので手に取りました。

    有川氏の作品は初めてでしたが、解説を読むまで男性と思い込み。他の作品も読んでみたくなりました。

  • 東京のJRと大阪の私鉄では、雰囲気がずいぶん異なるのですね。

    私はいつも電車の中では心を無にして、人と出来るだけ接触しないことを心がけています。
    しかしこの電車の中は、良くも悪くも人との出会いに満ちています。

    社会人になり、人との出会いもあまり無く、マンネリとした毎日。
    しかし、こんな風に新たな出会いがあるかも、と思うだけで、いつもの電車でもなんとなくワクワクします。

    特に素敵なのは、宝塚駅での政志とユキのような出会い。
    お互いタイプだと思っていたが声は掛けられずにいたところ、同じ電車に乗り合わせたことで話すきっかけになった、というのは
    阪急電車が恋の後押しの一助になったということでしょう。

    全く生活を異にする人同士が、電車で隣り合わせて座ったりすることって実はとても面白いのですね。
    この作品のような人生の"機微"を、私も期待したくなりました。


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著者プロフィール

有川浩(ありかわ・ひろ)
高知県生まれ。二〇〇四年『塩の街』で電撃小説大賞大賞を受賞しデビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊三部作」、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』など著書多数。

「2017年 『ニャンニャンにゃんそろじー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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