- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344415133
作品紹介・あらすじ
隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車-人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。
感想・レビュー・書評
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阪急電鉄今津線を舞台に、往路で登場する人たちの出会い、恋模様、人間模様、そして復路ではその人物たちのその後の成長、生き方や心情の変化が描かれた連作短編。
有川浩初読のレインツリーの国が読み心地良かったので、ずっと表題名が気になり積読していた本作を連読。
本作も恋愛小説の類に入るのだろうか。
そうであれば、おじさんの私はまだまだ恋愛小説でキュンキュンすることが判明した。
フォロー・フォロワーの皆さま、こんな私をご許容願いたい。
本作も心地の良い読了感を与えてくれた。
それぞれの目的があって同じ電車に乗車している人たち。
はじまりは他人同士、見ず知らずの人と人とが、ささやかなキッカケで出会い、影響され、ある者は恋に落ち、ある者は前向きな人生観を持ち…と、とてもホッコリする作品だった。
私の実家の最寄路線が阪急電鉄京都本線だったことも、親近感を持って読み進められた大きな要因のひとつだったと言えよう。阪急茨木駅。最後に乗車したのは、かれこれ20年ほど前。駅もその周辺も、きっと大きく様変わりしていることだろう。
本作を通じて、日常で乗る電車が少しだけ好きになった。
そしてまた1人、好きな著者が増えた。
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んんん~凄く面白かった
同じ電車に乗る 乗客達
それぞれが全く違う生き方なのに、皆少しだけ繋がっていて…各乗客のエピソードも、ホッコリしたり、スッキリしたり…
でもコロナ渦では、この感じでは生活できないですね
読んでて【コロナ渦になる前の日常を少し忘れてるな…どんなだったっけ…】と考えてしまった…
でもコロナ渦以前の感覚も少し思い出させてくれた
いい本でした -
電車に二人で乗っている時は、大抵緊張してそわそわしていた。視線はひたすら車内、乗客の中に知った顔がないかキョロキョロと視線をさまよわせていたものだった。その日、さてさて がXX駅から隣り合わせて座った女性は、さてさて からも女性の側からももちろんよく知った顔だった。○○線から△△線に乗り換えて一駅のYY駅に、今日夕食を食べる予定の場所がある。勤め人となって五年目の さてさて が久しぶりに赴くレストランだ。社内結婚だった さてさて は、妻と付き合っていることが同僚にばれることを極端に恐れ、ターミナル駅のデートを避け、各駅停車の停まる駅を選び、さらに同じ駅だと怪しまれると考えて、△△線の中で毎回会う駅を変えるということを繰り返していたのだった。三年後に結ばれた二人。でも、そんな二人の△△線を舞台にした物語を他の乗客は知る由もなかった。電車の中にいる人の数だけ物語はある。乗客たちがどんな物語を抱えているか ー それは乗客たちそれぞれしか知らない。
『その日、征志が宝塚駅から隣り合わせて座った女性は、征志の側から一方的に見覚えのある人だった』。ほぼ二週間に一度のペースで通う宝塚中央図書館。新刊を先に手に取るのを争うライバルだと征志が一方的に意識していた女性が隣に座ります。窓の外に見えた『生』という字のオブジェを見たことをきっかけに偶然にも二人の間に会話が生まれ、実は彼女も征志を意識していたことを知ります。駅に着き『この次会ったとき、一緒に呑みましょうよ。缶じゃなくてジョッキで』と征志に語り電車を後にする女性。『ジョッキでいくなら 今日やろ!』と慌てて征志はあとを追いかけるのでした。一方、そんな二人の会話をぼんやりと聞いていた翔子は『ウェディングドレスもかくやという白いドレス』を着て扉の近くに立っていました。最初は二人のことをカップルだと思っていた翔子。電車を飛び出し、彼女を追う彼の姿を見て『いいもの見ちゃった。恋の始まるタイミングなんて』と小さく呟くのでした。そんな彼女は『討ち入り』の帰り。そして、…と、たまたまその電車に乗り合わせただけの同じ車内の乗客を、主人公視点に順番に切り替えてリレーのように繋いで物語は展開していきます。
この作品は『阪急電車各線の中でも全国的知名度が低い』という今津線の8つの駅、所要15分を結ぶ車内を舞台に、たまたまその電車に乗り合わせたごく普通の人々のごく普通の日常の一場面を切り取って繋いでゆく作品です。何か大きなことが起こるわけではありません。ごく普通の人々が電車に乗り、シートに座って、駅に着き、そして降りていく。我々の誰しもが日常目にし、そして誰しもが取る光景と何ら変わりはありません。『ありとあらゆる身分、ありとあらゆる組み合わせの人々』がたまたま同じ時間、同じ空間を共にする偶然。思えば電車を利用するということは凄いことだと思います。『その一人一人がどんな思いを持っているか』。電車を利用している人はたまたま同じ時間、同じ空間を共にしているだけであって、それぞれの人生や思いをそれぞれが背負っていることなど意識していません。そして、電車を降りた後はまたそれぞれの人生の行くべき場所へと向かっていきます。そんな束の間の偶然の出会いの中で、はからずも他の乗客と思わぬ形でコミュニケーションを交わす時があります。一番多いのは席を譲る場面でしょうか。始発駅なら席取り合戦の場面でも何かしら人を意識する瞬間が生まれるかもしれません。そして、そんな中でほんのちょっとした会話が、ほんのちょっとした行為が、その相手の人生をも変えていくことがあります。でもそれぞれの人々は元々は知り合いでもなんでもないあかの他人です。この作品では、そんな他人と他人がたまたま同じ時間、同じ空間を共にしただけにも関わらず、不思議と知り合いにも見せてしまうところが絶妙です。そんな場面では、ある人が主人公として光を浴びていたのが、電車を降りて次の主人公にバトンが渡ると、電車を降りた人が途端に他人に思えてしまう不思議感。電車の乗客に絶対的な主人公など存在しないからこそ生まれるとても興味深い感覚です。この作品を読むことで、普段無意識に利用している電車というものがなんだかとても不思議な空間にも感じてきました。
そして、作品は、終点の宝塚駅への結末に向かって全ての伏線が鮮やかなまでに回収されていきます。その一方で、電車から見る景色がそうであるように、回収された伏線はそれぞれの主人公の物語とともに後ろへと、もう違う世界へと遠ざかっていきます。『人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく』。物語は宝塚駅を出た各駅停車が西宮北口駅に到着し、折り返します。行きの電車にも様々なドラマがありました。そして宝塚駅へと折り返す電車の中には、結末へと向かうその先のドラマがありました。電車が進み、ひと駅、ひと駅と終点の宝塚駅が近づくに連れ、ゆっくり走って欲しい、まだ到着しないで欲しい、もっと車内に息づく物語を見ていたい、そう強く感じました。
ほっこりとした幸せを感じた後に、しっとりとした余韻も感じさせてくれた作品。リズム感のある関西弁の響きとともに、作品全体から滲み出てくる沿線風景の味わいと、そこに暮らす人々の人としての魅力も存分に堪能させていただきました。
いいなあ、この世界観。素敵な作品に出会えました。 -
電車の中でたまたま隣り合った人たち。
そのたまたまの出逢いから友だちになったり恋人になったり。
隣から聞こえてくる会話から元気をもらったり、迷っている背中を押してもらえたり。
目の前の名前も知らない、おそらく傷ついているであろう人に言葉をかけてあげたり。でも深入りせず「正しい行きずりの関係」で。
「考えてみたらあたし、けっこう知らん人たちに救われてんねんなぁ」
小学生からおばあちゃんまで色んな年代の女性たちが、たまたまの出逢いから影響を受け合って強くなっていく、とても素敵な作品でした。
いやーしかし、関西弁のせいか、基本的にずーっと面白く読めて、読み終わるまでニヤニヤが止まりませんでした。ホント、最高に面白い本だった! -
有川さんは9冊目なので、作者の中で一番読まれている事もあり、既に読んだと思ったら読んで無かった。
阪急の中でも今津線という短い路線。出張で神戸や塚口に良く行っていたが、今津線は乗った事が無いし、駅名も難しくて読めないのが多い。
短い路線の登りと下りで時期を分け、オムニバス形式で人物を繋がらせて全ての駅を書き分ける。
同じ会社の婚約者を同僚に取られて復讐する女性や男性からのDVに悩む女性に、乗り合わせた乗客からのアドバイスで復活する姿が嬉しくなる。
また、電車の中での出来事で付き合い始める二組のカップルの初々しさ、その数ヶ月後の進行度合いなど、ドキドキしてくる。
多勢の乗客の中で、幾つものドラマが生まれて、もっと続けて読みたくなる内容だった。-
浩太さん
こんにちは。
少し前に、アマプラでこの映画を観て感動しました。
「阪急電車 片道15分の奇跡」というタイトルの 2011...浩太さん
こんにちは。
少し前に、アマプラでこの映画を観て感動しました。
「阪急電車 片道15分の奇跡」というタイトルの 2011年の映画です。
宮本信子さんと、まだ小さい芦田愛菜さんの主演でとてもいい映画でした。
このタイトルの本を見つけて嬉しくなったので
ついコメントしちゃいました☆彡
2023/08/16 -
yyさん
いつもありがとうございます。
映画もあったんですね。
宮本さんと芦田さんとなると、あのしっかりしたおばあさんと孫でしょうか。
あの...yyさん
いつもありがとうございます。
映画もあったんですね。
宮本さんと芦田さんとなると、あのしっかりしたおばあさんと孫でしょうか。
あのおばあさんは手厳しい正論の方ですが、ちゃんと相手に響いていて、ああいう方がもっと必要だと思ってしまいます。
人間模様が色々あって、楽しい本でした。2023/08/17
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私の中で阪急電車といえば渋いマルーンカラーのボディ!
そして『指詰め注意』のドアステッカー!(笑)
若かりし時に初めて関西に行って『指詰め注意』を見た時は、衝撃だった
古いですかあ?(^^;;
現在はより広くわかりやすい表現にかわっているそうだが、今もまだ使用している交通機関もあるんだとか
普段電車に乗る時、読める状況であるならば本を読んでいたい
見覚えある人がホームにいて、誰だっけこの人、知っている顔。。。???ああーッ!朝一緒のに乗っている人だあ!っていう事が過去に何度かある
帰りも同じ時間帯なんだ?と勝手に思って通り過ぎる
登場人物はたまたま電車の中で一緒になった行きずりの関係だが、それぞれがちょっとずつ繋がっていてストーリーがある
特に正義の味方?時江さんは、行きずりの関係の人達をバッサバッサ切りさばいていく
優しく、時には厳しく
実際、行きずりの関係の人に人生の助言をされたらどう思うだろうか?
間違えなく一瞬怯む
でも行きずりだから受け入れられ事って、あるかもしれない
身近な人から言われると変なプライドや意地が邪魔をするが、行きずりの人から言われたら、今自分がいる状況はその他大勢の一人から忠告される様な事なのか、と捉えられるもしれない
これが作中でいう「正しい行きずりの関係」か。。。
面白い設定で、のどかな気分を味わえる作品だった
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人が少しだけ他人のことを想えると、
素敵なことが沢山おきますね。
人のためを想い、相手の感情や
心情を感じてあげられる優しさが巡って、
少しの幸せを配っていく。
とても良い本でした。 -
他の方々も書いておられるように、ほんと面白いわ、これ。
わりと短いお話なんだけど、全編通じていろんな人々が繰り返し出てくる。たまたま電車で乗り合わせただけなんだけど、いろいろ関わりあってそれぞれに影響しあっている。想像すると、楽しくなってくる。
有川浩の本を1冊だけ勧めるのだとすれば、この1冊だね。あ、植物図鑑とかも良いけどね。 -
再読。
有川さんが好きになったきっかけの本です。
やっぱり面白い。
テンポの良い文章で描かれる人間模様は絶品。
たまたま同じ電車に乗り合わせた人たち。
みんなそれぞれの人生を生きていて、関わることのない人たち。
それが電車という空間で、さらっと関わる。
中には、さらっとではない出会いもあるが。
登場人物たちの年代は幅広く、いかにも電車という空間らしい。
そして女性たちが、なんともカッコ良いのです。
スカッと気持ちいい。
興味深いのは、小学校一、二年の女の子たちの話。
「こんな年でも少女たちはもう女だった。卑しく、優柔不断で、また誇り高い。あんな幼い、小さなコミュニティの中に、既に様々な女がいた」
本当にその通り、ズバリとした表現だと思う。
私は関東在住なので、今津線知らないんですが、いつか行きたい場所リスト入りです。
著者プロフィール
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