あまりにも時間をかけ過ぎた。
折角の力作が、一冊の本を「縦に」読むのではなく、たくさんの本を「横に」読み散らかすという僕のおばかな読書法によって、長く噛みすぎて全然味がしなくなったガムのようになってしまった。
だからといって、決して読み難い本だという訳ではない。
あくまでも、僕自身の本の読み方の問題だ。/
トッドを知ったのは、岩波書店のPR紙「波」に連載されていた鹿島茂さんの『ドーダの人 小林秀雄』でだった。
その文章の中で、あまりにも有名な彼の刺激的な分析を知り、これは読まねばと思った。
ロシアのウクライナ侵攻や、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を照射する一つの光源になるのではないかという期待もあった。
だが、読むのに時間をかけ過ぎたため、全ては失われてしまった。
今は、とりあえず最低限のまとめだけして、お茶を濁そう。/
【共産主義革命は、成長した労働者階級を有する工業先進諸国では実現しなかった。共産主義革命のすべてが、伝統的な農民家族が外婚性共同体型の国々で生起したのである。このような事実と歴史のデータは、マルクス主義の仮説を否定しており、人類学の仮説を根拠づけているのである。】(「序文」)/
トッドは、世界の家族システムを7つの家族類型に分類する。
絶対核家族、平等主義核家族、権威主義家族、外婚性共同体家族、内婚性共同体家族、非対称型共同体家族、、アノミー家族がそれである。/
【外婚性共同体家族の特徴
ーー相続上の規則によって兄弟間の平等が定義されている。
ーー結婚している息子たちと両親の同居。
ーーしかしふたりの兄弟の子供同士の結婚はない。
関連する地域
ロシア、ユーゴスラヴィア、スロバキア、ブルガリア、ハンガリー、フィンランド、アルバニア、イタリア中部、中国、ベトナム、キューバ、インド北部
共産主義とは何か。(略)私がここで提案したいのは、共産主義という現象の社会学的、地理学的な現実により一致していると思われる別の定義である。共産主義、それは外婚性共同体家族の道徳的性格と調整メカニズムの国家への移譲である、と。外婚性共同体家族が、都市化、識字化、工業化などのいわゆる近代化のプロセスによって解体されながら、その権威主義的で平等主義的な価値を新しい社会に伝えているのである。個人は権利上、平等だが政治機構に押しつぶされる。かつて拡大家族がロシア、中国、ベトナム、セルビアの伝統的社会で支配的な制度であったとき、個人が打ち砕かれていたように。】(「第三惑星ーー家族構造とイデオロギー・システム」)
- 感想投稿日 : 2022年6月20日
- 読了日 : 2022年6月20日
- 本棚登録日 : 2022年6月20日
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