ヨーロッパの歴史を題材にした小説を発表している、佐藤賢一。
長いこと、この作家さんの作品から遠ざかっていたのですが、その間に、魅力的な作品の数々を発表していることを知りました。
「久しぶりに、佐藤賢一の作品世界に触れてみよう」と思い立ち、文庫化されている作品の中から、特に時代が古いと思われるこの作品を、読んでみることにしました。
時は紀元前219年。
名門貴族の家に生まれたスキピオが17歳のシーンから、物語が始まります。
スキピオは同名で共和政ローマの最高職、執政官である父親から、出征を命じられます。
戦争の相手は、地中海を挟んでローマと対峙する、カルタゴ。
20年以上続いた戦争(第一次ポエニ戦争)で、ローマが勝利した相手ですが、19年の時を経て再び、大国となったローマに挑んできます。
そのカルタゴを率いるのが、ハンニバル。
戦地に赴いたスキピオは、ローマ軍が容易に勝てる相手と考えていたカルタゴ軍に、圧倒されてしまいます。
どこを目指して行軍しているのかも、どのような戦術でローマ軍と戦うのかもわからない、カルタゴ軍。
ハンニバル率いるカルタゴ軍の不気味さと、若きスキピオの苦戦が、描かれていきます。
自らを「凡夫」と定義するスキピオが、「天才」ハンニバルにどのように、立ち向かっていくのか。
その展開を読むのが、本書の楽しみ方だと思います。
ポエニ戦争については、ずいぶん前に読んだ『ローマ人の物語』で、おおよその流れを知っていました。
その記憶を辿りながら読んだのですが、スキピオという個人の視点で描かれていることもあり、ポエニ戦争での戦闘の過酷さ、ハンニバルという武将の怖さを、いっしょに体験するような感覚を、味わわせてもらいました。
作品の舞台は、紀元前のヨーロッパとアフリカ。
登場人物たちの名前も、多くの日本人読者には馴染みのないものが多いと思います。
そんな「遠い世界」の話ですが、スキピオをはじめとする登場人物に個性を持たせ、現代日本人が話しているような言葉で会話が進むので、理解に困ることなくすんなり、読み通すことができました。
久しぶりに読んだ佐藤賢一作品は、やっぱり面白く、読み応えがありました。
他にも未読の作品があるので、文庫化されているものを探して、読んでいきたいと思います。
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- 感想投稿日 : 2024年3月11日
- 読了日 : 2024年3月11日
- 本棚登録日 : 2024年3月11日
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